貿易戦争が中米経済双方の圧力に

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貿易戦争が中米経済双方の圧力に

[2018年7月31日]

米国は中国からの2千億ドル規模の輸入に対し10%の追加課税の実施を表明、もし確定すれば早くて8月末~9月初めに実施と予想される。米国による課税対象となる中国製品は最終的に5千5百億ドルに達するだろうとトランプ氏は高言している。米国のデータによると、現在米国は毎年中国から5千億ドル以上の製品を輸入しており、もし米国が5千5百億ドルの中国製品に対し関税を徴収する場合、それは中国からの輸入製品のすべてに対して課税することを意味している。トランプ氏はひたすら常識的なカードを出しておらず、米国が最後的に中国製品のすべてを課税対象とする可能性は依然として未知数と言える。

徐々に追い詰めてくる米国に対し、中国は報復措置を打ち出すほかない。中国が輸入している米国製品の総額は、米国が輸入している中国製品の総額よりもはるかに低いため、中国は同額の米国製品に対して関税を徴収することができない。言い換えると、中国は、また別の方法で米国に報復を行うはずだ。例えば、米国企業が中国国内での動きを規制される可能性があるかもしれない。

今回の貿易戦争において、中米は双方が敗者となっている。米国がより多くの中国製品に対し関税を徴収するにつれ、米国内の消費者に及ぼす影響が徐々に明らかになると予想される。経済の視点から見て、貿易戦争は間違いなく中米経済にとって圧力となるだろう。貿易戦争は米国において減税措置によってもたらされたメリットを相殺してしまう可能性があると警告する者も出ている。パウエルFRB議長は、米国経済の先行きにはリスクが存在しており、当局が必要な際には利下げによる経済刺激を行う可能性があるとしている。

中国においては、ある分析によると、米国が1千億ドル規模の中国製品に対し関税を徴収すると、中国の経済成長が0.3~05パーセント減少する可能性があると指摘している。2020年の実現を目指す「小康社会(ある程度裕福な社会)」の目標に到達するには、中国の年間経済成長率は少なくとも6.5%を達成しなければならないが、もし貿易戦争の規模が拡大し続けるとなれば、もしかすると「小康社会」達成の予定を先延ばしにする可能性もあるだろう。

貿易戦争がもたらす影響を引き下げるため、また経済成長率が6.5%を下回らず推移するよう確保するため、中国は下半期により多くの刺激策を打ち出すと予想される。市場では中国が人民元安化を継続することで貿易戦争の影響に対抗する可能性に関心が集まっているが、人民元安の継続で資金流出が引き起こされるなどの後遺症をかんがみれば、トレードオフの観点から、中国が人民元安を継続する可能性は高くないと言える。しかし、もし中米貿易戦争が激化すれば、中国がさらなる人民元安に踏み切る可能性は捨てきれない。

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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