人民元安で増す米ドル建て債の負担

- テンガードホールディングスリミテッド

トップページ » スタッフコラム » 

スタッフコラム

人民元安で増す米ドル建て債の負担

[2016年1月20日]

1

市場で不満の声が広まる中、中国証券管理監督委員会(中証監)は実施開始からわずか4日となるサーキットブレーカー制度を一時停止するとした。政府の決定が流れに従うも善しと見る者もいれば、朝令暮改だと見る者もいる。そもそもサーキットブレーカー制度の目的は、株式市場で大幅な変動が発生した場合でも投資家心理を安定化させられることを望んで設定されたものだ。出発点は良かったものの、中国本土の株式市場は成熟した市場ではなく、その上8割が個人の小口投資家となっている。このため、株式市場でサーキットブレーカー発動に至った第1段階の下落で、投資家心理は安定するどころか、かえって焦慮を招いた。その結果、いとも簡単に第2段階の発動レベルに下落し、終日取引停止を誘発してしまった。サーキットブレーカー制度が投資家心理の安定化に効果を発揮するためには、株式投資家の成熟度を高めることが重要ポイントの一つである。

2016年に入り、中国株式市場はずるずると敗退している。サーキットブレーカー制度がA株下落を激化させていることに間違いはないのだが、株価急落の元凶を招いているわけではない。経済指標の不振および相次ぐ人民元安こそが株式市場暴落の根源なのだ。人民元は完全な自由変動通貨ではないため、もし中央政府がこれを承諾しないままであれば、人民元安が続くことはないだろう。事実上、中国人民銀行(中央銀行)が昨年突如人民元の切り下げを発表したことで、人民元はもう価値が上昇するばかりの通貨ではなくなってしまった。また、人民元のSDR加入によって、人民元はこの先ますます市場化が進むと見られている。このため、中国本土経済の目下の発展に合わせるべく、人民元の更なる下落は避けられないだろう。

マクロの視点から経済を考慮すると、人民元安はデフレに対抗することができ、生産能力過剰問題の解決にも一定の助けとなるだろう。だが、株式投資の視点から見れば、人民元安は中国資本株のメリットを弱め、その結果企業のファンダメンタルズに影響を与える可能性もある。資料によれば、中国本土企業が発行する社債は5,800億米ドルを超えており、人民元安はこれらの返済負担を大きくしている。もし米国が更に利上げを行えば、この情況は更に悪化するだろう。業種ごとに見ると、中国本土銀行および中国本土不動産企業が最も多く米ドル建て社債を発行しており、合わせて総額の3割を占めている。

   テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

 

Share on LinkedIn
Pocket

お知らせ

  • テンガードからのお知らせ
  • スタッフコラム
  • 株式市場関連
  • よくあるご質問
ダイヤモンド社発行『ダイヤモンドQキュー』にてテンガードが紹介されました!

証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。

香港強制性公積金計劃管理局 (MPFA: Mandatory Provident Fund Schemes Authority) の正規取扱代理店です。

香港保険業監管局 (IA: Insurance Authority) に正式登録されているライセンス保有代理店です。