マイナス金利で日本人は銀行に預金しなくなるのか

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マイナス金利で日本人は銀行に預金しなくなるのか

[2016年3月11日]

(JAPAN INTEREST RATE 日本国債金利)

(JAPAN INTEREST RATE 日本国債金利)

先月末、日銀は突然マイナス金利政策の実施を発表した。新政策のもとでは、銀行が中央銀行に資金を預けても、利息収益が無いどころか反対に中央銀行に費用を支払わなければならない。日銀がマイナス金利政策を推進する目的は、流動性を更に開放し、銀行が貸付に回す資金規模をより大きくさせるためだが、流動性を拡大しても、貸付需要を確実に上昇させられるとは言えない。日本経済に対する市場の信頼が回復しない限り、再び流動性を拡大させようとも貸付需要の刺激を後押しすることはできない。日本経済は構造問題に直面しており、流動性を拡大しても問題の根本的な解決は不可能となっている。政府が思い切った改革を行わなければ、日本経済が長期的に困難な局面を抜け出すことはできないだろう。

貸付需要が乏しいなか、マイナス金利政策は銀行の負担を重くさせ、収益能力を損なわせることになる。銀行は負担を軽減させるため、例えば預金者に預金手数料を課すなどして、マイナス金利政策によってもたらされる超過コストを預金者に転嫁する可能性も考えられる。ある報道によると、日本では何人かの年輩の人々が、マイナス金利政策を理由にお金を銀行に置きたくないため、むしろ金庫を購入して自宅でお金を保管したいとし、金庫の販売量が倍増しているとのことだ。これではマイナス金利政策に明らかな効果が出るかどうかが判明する前に、大口預金者が威嚇されてしまう恐れがある。もし預金者によって銀行から預金が持ち出され自宅に保管する流れが継続すれば、日銀のマイナス金利政策によって経済を刺激したいという主観的な願望は、更に実現が難しくなる恐れがあるだろう。

日本だけでなく、ECB(欧州中央銀行)もマイナス金利政策を実施し、市場ではECBが来月にも更に利下げする可能性が有ると予想されている。現在一部の中央銀行によるマイナス金利政策実施にとどまっているものの、世界経済が継続して下落圧力を受けており、各地の中央銀行がこのさき経済救済措置としてマイナス金利政策を重点措置とする可能性については注目しておくべきだろう。参考例が少ないことから、私達はより多くの国々でマイナスの金利政策が採用された場合、世界経済で一体どのような状況となるのか、予測が難しい状況にある。しかし、比較的確かなことは、マイナス金利政策の出現は不景気深刻化を意味していることであり、こういった状況から、投資策略は保守に傾向すべきとなろう。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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