- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2016年8月9日]
日本では参議院議員選挙で政権与党である自民党が大勝利をおさめ、この選挙結果は安倍政権下の新たな経済刺激策の後押しとになる。安倍政権下において、日本経済はある程度の期間好転の兆しが見られたものの、増税のマイナス影響や円高化が足かせとなったことで好転の勢いは続かず、アベノミクスも市場からは失敗に終わったと認定されてしまった。日本経済は主に構造的な問題が起きているため、単純に大規模な金融緩和策に任せるだけでは、日本経済を袋小路から救い出すには不十分だと言えよう。事実、日本ではすでに大規模な量的金融緩和策が長期間実施されてきたが、もしこの政策に効果があったとるなら、日本経済が長期にわたり低迷する事はなかったはずだ。
金融緩和策が効力を失い、この先安倍政権は財政政策を主力に経済刺激を行うかもしれない。だが、日本政府の債務総額は昨年末でGDP比229%と、かなり多くの債務を保有しているため、日本政府が大幅に財政支出を増加することは難しいだろう。その他、日本では高齢化問題が深刻で、年金や医療などの社会保障は国民が最も関心を持つ課題となっている。もし財政資源から経済刺激を行う場合、国民が現在享受している社会保障が削減される可能性が出てくるため、どのように社会保障を削減せずに財政資源から経済刺激を行っていくのか、これが安倍政府が間もなく直面する難題となる。また、日本は近年しばしば貿易赤字を計上しており、円高化は輸入超過を悪化させると見られ、この現象で日本政府は市場救済能力を損なう恐れがある。
総合して見ると、日本における量的金融緩和策はとうに効力を失っており、財政政策は債務および高齢化問題による多くの制限を受けることから、現状、市場では安倍政権が最終的に「ヘリコプターマネー」(ヘリコプターからお金をばら撒くように現金を人々に直接供給する事)という極端なやり方で経済救済を行う可能性に注目が集まっている。日本経済の先行きは不透明だが異常な円高化が見られ、為替相場と経済パフォーマンスが相反する動きとなるのは、主に世界的なリスク回避情緒によるものだ。もし日本円相場がファンダメンタルズに回帰するようになれば、投資家が他のリスク回避通貨を探し求めて急速な円安化が進み、世界の金融市場が激しく変動する恐れが出てくる。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
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