- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2016年9月8日]
年次経済シンポジウム上で、イエレン米FRB議長は近月中に利上げを行う可能性が高まっていると示したものの、これまで決して利上げ実施の明確なスケジュールを発表していない。全体的に見て、イエレン氏の発言内容に対し、筆者はあいまいな印象を覚える。近年、世界の政治情勢における変化がめまぐるしく、的確な政治情勢の先行きを把握することは以前よりも困難となっている。先行き見通しが立ちにくい中、イエレン氏が確固不動に利上げを実施するのはFRBの融通性が弱まった時に掌握できるだろう。鶴の一声になってしまうため、イエレン氏が遅々として利上げ時期を言わないことは理解もできる。事実上、9月から3カ月にわたり、世界の政治情勢に重大な変化がもたらされる可能性が高まってきて、誤った決断をしないよう、イエレン氏は引き続き慎重な策略をとる可能性があろう。
米利上げの行方に注目があつまるほか、最近のLibor(ドル建てロンドン銀行間取引金利)の動向も市場の焦点になっている。米管理当局は10月14日のマネー・マーケット・ファンドについて新規定を実施する予定で、ファンドで大量に売買が行われる場合、追加費用を徴収できるとし、必要に応じて解約の一時停止も可能になるとしている。マネー・マーケット・ファンドでは主に預金や、預金証券などのリスクがやや低い金融資産へ投資しており、解約リスクの上昇に従い、マネー・マーケット・ファンドへ流入する資金は減少すると予想される。マネー・マーケット・ファンドは銀行債券の主要な買い手であるため、ファンドへの需要が減退する際、銀行は他のルートから資金を借り入れなければならず、銀行間取引市場がそのルートの1つとなるため、最近のLiborの上昇はじきに新たに実施されるこの規定と大いに関係している。
米ドルペッグ制のもと、香港ドルにおける政策金利は米国と同様の動きになるべきであるものの、大量のホットマネーが香港にあふれる中で、ここ3カ月でのLibor及びHibor(香港銀行間貸出金利)間のギャップはここ6年で最も差が開いている。もしLiborが高水準を維持するか、更なる上昇を見せた場合、香港のホットマネーの流出で金利裁定取引が活発化し、資金流出が株式市場に圧力をもたらす可能性が出てくる。このほか、金利裁定取引によりHiborが上昇し、借り入れコストが上昇して不動産市場やビジネス活動も圧力を受けることになるだろう。Libor及びHiborのこの先の動向に、投資家は要注意となる。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
香港強制性公積金計劃管理局 (MPFA: Mandatory Provident Fund Schemes Authority) の正規取扱代理店です。
香港保険業監管局 (IA: Insurance Authority) に正式登録されているライセンス保有代理店です。