- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2016年11月16日]
中国の人民元(RMB)は、10月1日付けで特別引出権(SDR)通貨バスケットとして正式採用され、人民元国際化の過程がまた一歩進んだ事が示された。SDR採用後、人民元の国際市場における地位は上昇し、各国中央銀行が準備通貨の一つとして人民元を保有する可能性も徐々に増加している。人民元の受容性の増加は、中国の政府や企業にとって、今後国際社会において融資活動を進める上で有利となり、海外資金の中国投資を後押してプラス作用が生まれる。
近年、人民元は人々に上昇するばかりで下落などしないという印象を与えていたものの、この暴落ぶりは、人民元は上がりも下がりもする通貨であるという事実を知らしめている。人民元の更なる国際化に伴い、中国政府は為替相場への関与を減らしていくだろう。つまり、人民元の通貨価値は次第に市場にゆだねられるようになり、為替レートの長期トレンドは中国経済の実状に応じて反映されるようになるということだ。中国経済は明らかにまだ底を脱する前であるため、人民元安のトレンドが続くと推測する。経済ファンダメンタルズのほか、米ドル強勢も人民元安に圧力を加えている。市場では米国が12月に利上げを行うと確信されており、米利上げは米ドル強勢を継続して支持すると予想され、今後12月の米FOMCまで、人民元はそれなりに大きい下落圧力に耐えなければならないだろう。
資金の投資ルートが乏しいなか、大量の投機的資金が不動産市場に殺到。不動産市場の「高騰」を誘発させおさまりを見せていない。不動産価格の高止まりでビジネスの経営コストがかさみ、中国の競争力が弱まっている。競争力を維持するため、中国は不動産価格の上昇に歯止めをかけて秩序ある人民元安に向かわせなければならない。さもなくば、「不動産高騰、為替高騰」といった「ダブル高騰」問題が将来的に外資の懸念材料となり、中国経済の長期成長にとって不利となるだろう。不動産市場熱が非常に高まる現在、適度な人民元安は中国不動産市場におけるバブルリスクを低下することができる。これまで、中国本土は財政と金融政策のコントロールを主力として経済を成長させてきたが、今こそ為替相場政策をどこまで行うべきかをよく考慮すべき時となっている。適切に運用さえすれば、為替相場政策は経済安定効果も同様に発揮できるだろう。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
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