- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2017年8月9日]
少し前のある報道によると、中国本土において株式市場への年金資金投入が認可されたとして、材料視されて中国国内の保険関連銘柄を刺激し高騰をみせている。中国では、年金資金の規模が約4兆元であるものの、年金資金はあまりにも積極的な投資戦略を採ることができない為、年金資金による株式購入が認可されたとしても、投入金額は制限を受けるであろう。ある投資銀行の推測によれば、2千億元あまりの年金資金だけが株式購入にあてられ、その額はA株の時価総額1%を下回るに過ぎないとしている。このように、年金資金がA株にあまり大きな刺激をもたらすことにはならないであろう。さらに、年金資金の株式市場への参入認可は、あくまで一気に年金資金を投入しなければならない、というものではないため、もしも資金が時期を分けて株式市場に投入されるとなると、A株が受ける刺激はさらに小さいものとなる。
年金資金が求めるのは安定した収益であり、そのため、年金資金が買い入れる株式は大型株やファンダメンタルのサポートを有する株式となるはずで、全てのA株がいずれも恩恵を受けられるとみるのは非現実的な考え方だ。年金資金の規模が大きくなるつれ、年金資金は将来的にさらに多くの優良なA株を選択する必要がある。つまり、ひとたび年金資金の株式市場への開放が行われると、中国はA株の改革を加速させ、上場する企業の質を向上させる必要がある、ということである。
A株の質を向上させるには、2つの方向から着手できる。第1は、現在すでに上場している株式を整理し、違反を犯している企業には懲罰を与えること。そして第2には、新規株式公開を通して、より多くの優良な株式を取り込むことである。マーケットでは常々、新規株式公開を急ぐと、株式市場にプレッシャーがもたらされると懸念しているが、もし、新規に上場する企業が優良企業であるならば、その新規株式が資金をマーケットに呼び寄せる後押しとなろう。A株は2015年に暴落してからずっと不調が続いているため、人民元安やA株の質の向上が待たれること等が、いずれも投資家のA株に対する注目点に影響している。中国中央政府による金融リスク抑制が今年の重点項目の一つとなっていることから、デレバレッジ及び信用取引拡大への厳しい取り締まりが継続され、A株の動きを制限することとなろう。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
香港強制性公積金計劃管理局 (MPFA: Mandatory Provident Fund Schemes Authority) の正規取扱代理店です。
香港保険業監管局 (IA: Insurance Authority) に正式登録されているライセンス保有代理店です。