- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2025年7月2日]
2025年の世界経済は、抑圧的な静けさに包まれている。株式市場はなお上昇を続けているが、それはまるで嵐の前の静けさのようだ。最新の報告によれば、2025年の世界経済成長予測は2.3%に引き下げられ、2008年の金融危機以来の最低水準となっている。さらに警戒すべきは、世界の約7割の経済体で成長見通しが同時に下方修正されていることで、広範な経済減速が形成されつつある。
この嵐の中心は、ますますはっきりとホワイトハウスを指し示している。トランプ氏が大統領の座に復帰した後、米国の貿易政策を驚異的なスピードで再構築し、3か月以内に複数回にわたる大規模な関税を実施した。鉄鋼・アルミニウムの輸入関税は25%に達し、中国製品に対する関税は145%にまで引き上げられた。このような政策転換は「100年に一度の異例なもの」と形容されており、その不確実性はパンデミックのピーク時に匹敵するとされている。これらの関税は単なる摩擦では済まされない。調査によれば、米国の実質関税率は80年以上ぶりの最高水準に達しており、計画がすべて実行されれば、19世紀末以来の記録となる見込みだ。これらの措置は、世界経済という池に投げ込まれた巨大な石のように、波紋を急速に広げている。米国の消費者は真っ先にその皺寄せを受け、小売業者は値上げを発表し、自動車産業は深刻な打撃を警告している。政策の方向性が見えない濃霧のなか、企業は投資や採用の判断を相次いで保留している。
関税は、トランプ政権の政策パッケージの第一のドミノにすぎない。連邦支出を1兆ドル削減するという計画の分析では、この規模の緊縮が1年のうちに実施された場合、直接的に景気後退を引き起こす可能性がある第2のドミノになるとされている。さらに破壊力を持つのが、大規模な移民送還計画である。建設業と農業、いずれも移民労働者に大きく依存する産業が、深刻な打撃を受けると見られている。歴史が示すとおり、大規模な送還は移民だけでなく、経済活動の連鎖が断たれることで、国内労働者の失業も引き起こす可能性がある。さらに懸念されるのが、インフレの脅威の再来である。関税によって輸入価格が上昇し、労働力不足が生産コストを押し上げることで、二重の圧力がアメリカを物価上昇と経済停滞というジレンマに陥れる恐れがある。FRB(米連邦準備制度)は、利上げは景気後退を悪化させかねず、金融緩和の維持は物価高騰を容認することになるという難しい選択を迫られる。そのため、現時点での利上げに慎重な姿勢は、最悪の局面に備えて余地を残すという意味で理解できる。
この衝撃波は世界中に急速に広がっている。東アジア・太平洋地域の成長率は明確に鈍化すると見込まれ、中国の経済成長率は4.5%にまで低下する予測となっている。EU(欧州連合)は、自らの成長率を約1%にとどまると見込んでいる。新興市場も例外ではなく、成長見通しは従来の予測より引き下げられている。根本的な矛盾として、世界最大の経済大国が自ら作り出した不確実性が、いまや世界経済最大の「逆風」となっている。発展途上国が雇用の促進に取り組んでいる最中、1人当たり所得の成長率は21世紀初頭の平均水準よりも3分の1低くなると予測されている。
見通しが暗いとはいえ、世界経済は完全に希望を失ったわけではない。貿易分野における対話の増加は「不確実性の払拭に資する」可能性があり、サプライチェーンも新たな構造に適応しつつある。分析によれば、協定を通じて関税を半減できれば、今後2年間の世界成長率は上昇する可能性があるという。EUは域内市場の深化を計画しており、発展途上国は貿易の多様化を模索している。
トランプ政権が「関税の鞭」で世界経済を再編するなか、データは2020年代の最初の7年間が、1960年代以降で最も成長の遅い時期になる可能性を示している。世界経済の命運は政策選択の天秤にかかっており、歴史が繰り返し証明してきたように、貿易戦争に勝者はいない。あるのは、共通の景気後退という深淵だけだ。世界経済はすべての国が共に航行できるほど広大だが、舵取り役の気まぐれには耐えられないほど脆弱でもある。
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