- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2026年4月6日]

金価格は第2四半期の高値から約5%下落し、明確な調整局面に入った。ただ、この動きは長期的な強気シナリオの悪化ではなく、マクロ経済見通しの戦術的な再評価を反映したものとみられる。周期的な観点からは、米国経済指標の底堅さ、連邦準備制度理事会(FRB)の政策見通しのタカ派方向への修正、さらに投機的なロングポジションの解消が重なり、今回の下落をもたらした。しかし、こうした周期的な逆風は、準備資産としての金の構造的役割を否定するものではない。主権債務への懸念、制裁の常態化、そして多極化する通貨秩序の台頭によって加速する脱ドル化の流れの中で、金は長期的な準備資産として不可欠な戦略的地位を維持している。
まず、実質金利の高止まりが挙げられる。米国の消費者物価指数(CPI)や雇用関連指標の上振れを受け、政策金利の市場が織り込むターミナルレート(最終到達金利)は5%付近へと再評価され、利下げサイクルの開始時期も2026年末以降へと後ずれするとの見方が広がった。これを受け、10年物インフレ連動国債(TIPS)の実質利回りは過去1か月で約30〜40ベーシスポイント上昇している。利息を生まない資産である金は、実質金利の上昇が機械的に保有コストの上昇につながるため、トレンドフォロー型やリスクパリティ型戦略によるシステマティックな売りを誘発した。
次に、投機筋のポジション整理が進んだことも価格下落の要因となった。売り圧力が強まる前、金先物の投機的ネットロングは過去5年レンジの90パーセンタイル付近に達しており、ポジションが過度に集中していた。こうした過密状態は、レバレッジ解消局面で価格変動を増幅させやすい。その後のポジション解消は秩序立って進んだものの規模は大きく、未決済建玉は顕著に減少した。これは典型的な平均回帰の過程であり、構造的な需要の変化を示すものではない。
さらに、中央銀行による金購入のペースが一時的に鈍化したことも下落に影響した。公的部門の需要は依然として歴史的に強い水準にあり、2025年の年間購入量は過去3番目の規模となったが、2026年初頭には購入ペースがやや減速した。一部の新興国中央銀行が為替変動の管理を優先し、様子見姿勢を取ったことで、これまで下値を支えていた重要な限界的買い需要が後退した。
足元の価格の弱さは、より深い構造的変化を覆い隠している。世界の準備資産管理者は、静かではあるが継続的にドル建て資産へのエクスポージャーを削減しつつある。米国による対ロシア制裁や外国公式資産の凍結、SWIFTシステムの制裁手段としての活用は、ドル建て資産のリスク・リターンの評価を根本的に変化させた。同時に、中国をはじめとする新興国は金の保有を積み増す一方、非ドル決済メカニズムへの関与も強めている。
こうした背景の下、金は投機的商品としてではなく、カウンターパーティーリスクを持たず、地政学的制約も受けず、数千年にわたり最終決済資産としての地位を維持してきた唯一の準備資産として再評価されている。多極化が進む世界では、中央銀行や政府系ファンドがドル、ユーロ、人民元のいずれかに単独依存することは難しくなる。金はその代替として、中立的で普遍的に受け入れられる価値保存手段を提供し、決済システムの支配構造に依存しない資産として機能する。
長期的な準備資産の観点から見れば、今回の調整は金の戦略的配分を縮小する理由にはならない。むしろ、配分が相対的に低い投資主体にとっては、再参入の機会となり得る。準備資産ポートフォリオの本来の目的は、安定局面での超過リターンの追求ではなく、システム的なストレス局面における購買力の維持と流動性の確保であり、金はまさにこうした局面で力を発揮する。
脱ドル化の進行は直線的ではなく、周期的な逆戻りや一時的な楽観が生じる可能性もある。しかし長期的な方向性は明確である。金は単なるヘッジ手段ではなく、構造的に必要とされる資産となりつつある。今回の調整は長期上昇トレンドの中の周期的なノイズと位置づけられ、長期的な強気見通しは維持されるとの判断が妥当と考えられる。
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