長実と和黄の再編は始まりに過ぎずか

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長実と和黄の再編は始まりに過ぎずか

[2015年1月21日]

PI長江実業(00001.HK)および和記黄埔(00013.HK)の上場企業2社の再編・再上場計画は、市場にインパクトを与えたと形容する者もいれば、世紀の大再編と呼ぶ者もいる。実のところ、この2社の再編計画は伏線がなかった訳ではなく、和記黄埔による大手スーパー「パークンショップ(百佳/PARKnSHOP)」の売却やドラッグストアチェーン「ワトソンズ(屈臣氏/Watson’s)」の上場計画など、これらの挙動はいずれも香港財界の「超人」と称されるリカシン(李嘉誠)に以前から業務再編の意思が有ったことを明確に物語っている。「超人」は香港トップの富豪であり、加えて賢明な業績を残していることから、彼の一挙一動は常々政治・商業界からの注目が集まる。こういった「超人」の特殊な位置づけにより、今回の長江実業および和記黄埔の再編は各界の注目を大いに集めることとなった。

現在、リカシン一族は長江実業の株式を4割以上保有しており、再編後は長地集団の株式保有を約3割にとどめるとしている。株式保有率の下落から、「超人」が不動産市場を悲観しているのではとの懸念が生まれている。この他、再編後に新設立となる長地集団(CKプロパティー)と長和集団(CKHホールディングス)の2社は、ケイマン諸島登記となり、香港での登記が選択されなかった事から、「超人」が中国・香港の先行きに期待していないと解釈する者もいるようだ。筆者は、今回の再編にまつわる背後関係に過大な憶測をせず、あくまでも再編計画上で発生する効果や利益に着眼点を置くべきと考える。

和記黄埔は総合企業であり、事業の多元化よって、ホールディングス全体が有する価値を長期に渡って株価に反映できていない。現在、長江実業が和記黄埔の株式を5割近く保有しているものの、垂直式の株式保有もまた、長江実業の株価に事業価値を反映できずにいる。再編完了後は長和系の事業構成が簡略化されることから、わかりやすい事業構成が企業の事業価値の明瞭化を後押しするだろう。この他、配当率の増加も注目すべきメリットの一つだ。投資家が株式購入の際に、当然価格上昇および配当からの収益を望むわけだが、「超人」が今後配当率上昇の可能性を示唆した事で、株主の心をつなぎ止める効果があったようだ。

将来的に長和は非不動産事業を主力とし、長地は不動産事業を専門に経営していくことになる。リスク許容度が低めの投資家は多元化の長和を、そしてより積極的な投資家は長地を選択肢に入れると見られる。長和系の企業は多岐に渡るため、今回の再編は始まりに過ぎず、この先、一部の事業セクターをスピンオフ(分離・独立)して上場させるなど、より多くの動きが出る可能性があろう。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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