- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2015年3月2日]
米FRBイエレン議長が下院金融委員会での公聴会に出席、その発言の重要ポイントは4つに集約できる。第一に、雇用市場が継続的に好転しているものの、賃金の伸び率とインフレ率が依然としてFRBの目標を下回っている。第二に、FRBが今後毎回議会で利上げ需要を検討するとし、金利政策に十分な柔軟性を確保できる可能性がある。第三に、FRBは利上げ実施前に先にフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を引き上げるため、FF金利の引き上げ前に利上げとなる可能性はないと言える。そして第四に、今後二回の議会で利上げ実施が宣言される可能性はまずないという点。これらの重要ポイントを総合すると、米国の年内利上げの可能性が低下しており、第4四半期まで利上げ延期となる可能性も推測できよう。
事実上、世界の多くの国々で金融緩和策が採択されており、ここでもし米国だけが相反して利上げを固持すれば、大量の投機的資金が米国に押し寄せ、米国はすぐさま過剰な投機的資金がもたらすリスクに直面してしまうだろう。また、原油価格の暴落によって世界のインフレ率で低水準が続き、一部の国ではさらに深刻でデフレの脅威に瀕している。インフレ率は中期で反発すると予想されるものの、短期で見れば、米国にとって利上げの切迫性がないのは明らかだ。
イエレン氏は発言の中で、賃金の伸び率及びインフレ率の低迷について触れており、この発言が一般的に考えられているほど米国経済が堅調ではないと示唆している可能性について、よくよく検討してみる価値があるだろう。ここ最近、ダウ平均やS&P500でたびたび高値更新が見られるものの、経済活動を反映するダウ輸送株指数では同様の高値更新は見られず、この運送指数のパフォーマンスの立ち遅れは米国経済の減速リスクの兆候となるため、運送指数が低迷している間はダウ平均及びS&P500の情況が続くか否かに注意を払う必要があろう。
率直に言ってしまえば、欧州経済は振るわず、中国経済も下落、日本経済も好転の兆しがまだ見られない事などが影響し、米国の経済成長が減速してもおかしくはない。また、米国経済はこれまで消費によって牽引されてきたため、賃金の伸び率やインフレ率の低迷が、この先消費意欲にダメージを与えることになるだろう。このほか、ドル高の流れも米国の輸出市場に不利となり、各企業の利益にもマイナス影響があるなど、こういった要因も今後の米国経済に圧力を構成していくと見られる。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
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