- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2015年3月30日]
米FOMC声明において利上げに対し再び「忍耐強く」の表現が使われなかった事が注目されるが、FOMC声明およびイエレン氏の記者会見での発言を総合すると、FRBがさほど利上げを急いでいないことがわかる。FOMC声明によると、FRBは雇用市場がさらに好転し、インフレ率が2%まで回復すれば利上げが可能になるとしている。米雇用市場を総合的に見ると、失業率が低下し、非農業部門雇用者数が20万人増を維持するものの、賃金の伸びにまだ明らかな加速が見られないことから、米雇用市場の現状は質より量が先行していると言える。このほか、ここ数カ月で国際原油価格の下落が続いていることから、デフレの脅威が拡大し、世界の多くの国々がこれに対応するべく金融緩和の採択に迫られている。賃金の伸びとインフレ圧力がまだ見られない現状は、確実に米国が利上げを見合わせる要因となっている。
注意すべきは、FRBがフェデラルファンド(FF)金利誘導目標の予想を引き下げており、今年と再来年の下降幅が0.5ポイント、来年の下降幅に至っては0.5ポイント以上となっている点だ。この事実は、たとえ米国が利上げを行うとしても、これまでの予想よりも少ない上げ幅と回数になる事を物語っている。米シカゴ地区連銀の総裁は、FRBが直面する最大のリスクは時期尚早に利上げを開始し、経済反転のリスクを上昇させる事だと語り、この発言は米国経済が皆が想像するほど順調だとは限らない可能性を暗示しているかのようで、FF金利予想の引き下げにはまさにFRBの米国経済に対する減速リスクへの懸念が反映されている。事実上、欧州、日本、中国などの国々で経済状況が軒並み弱く、米国経済がいつ減速してもおかしくない状況だ。
また少し前には、ダウ平均およびS&P500指数が何度も最高値を更新しているものの、経済活動を反映するダウ輸送株指数ではまだ追随が見られず、米国経済に弱化の可能性が含まれていることが示されている。このほか、米国債の10年債·30年債の利回りがまだ低下傾向を抜け出せておらず、もし米国経済の長期見通しが良好であるならば、長期金利は上向くはずにも関わらず低下傾向を示している。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
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