米利上げ先送りで生まれる市場の不安感

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米利上げ先送りで生まれる市場の不安感

[2015年9月30日]

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近年最重要視されてきた政策金利協議についに結果が出た。大方の予想通り、米国は引き続き金利を維持することとなった。米金利の今後の方向性について、私達はイエレン氏の発言や議会証言から、いくつか手がかりをつかむことができる。まず、イエレン氏は現時点で利上げを行わない理由を外部要因に押し付け、とりわけ中国に原因があるとしているため、もし中国経済が今後も低迷する場合、FRBが引き続き利上げを見送る可能性が非常に高い。

そのほか、イエレン氏は以前頻繁に雇用市場のパフォーマンスについて述べていたが、今回は米国のインフレ率が目標に達していないことをやや案じており、米国がデフレとなる可能性への懸念が反映されている。事実上、世界経済が鈍化しており、大口商品の価格はすぐに下落し上昇が難しく、その上米ドルは強勢を維持している。これでは米国のインフレ率が長期的に2%増に達するのは確かに難しい。デフレリスクが解消するまで、FRBが利上げに踏み切るタイミングは遅れはすれど、早まる事はないだろう。

投資市場にとって、米国が遅々として利上げに踏み切らないことは、投資家にとって最も恐れる不確定要因となってしまうため、決して好材料とはならない。米国が利上げの行方を明らかにしないうちは、世界の金融市場のトレンドが引き続き方向性を失うと見られる。金利上げが決定するまで、米国および他国の経済状態を考慮するほか、FRBは米利上げが世界経済にもたらす可能性のある影響について、全面的な検討を行うべきであろう。

少し前に、ある国際組織が警告を出しており、もし市場が米国の利上げを利上げ周期の開始であると見なした場合、新興国市場からの資本流出の流れが深刻化する可能性があり、結果として経済危機をもたらす可能性もあるとしている。全世界の各主要経済体を総合的に見ると、米国を除き、他の経済体ではいずれも利上げ条件が揃っていない。それゆえ、米国が全世界の経済傾向に逆行すれば、確実に制御できない結果を招くことになろう。利上げがもたらす不安を取り除くためには、FRBは市場予想をしっかりと管理しなければならならない。例えば、一度目の利上げ後、かなり長い期間をおかなければ次の利上げを行わないと表明しているが、こうなると米国の貨幣政策の融通性を弱めてしまうため、FRBが実際にその通りに舵を切るか否かは疑う価値があるだろう。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。) 

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