金利市場化は 中国本土内の銀行競争を激化か

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金利市場化は 中国本土内の銀行競争を激化か

[2015年12月8日]

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経済を安定させるべく、中国人民銀行(中央銀行)は少し前に政策金利及び預金準備率を引き下げたものの、この「ダブル緩和」による株式市場への効果はまだ見られず、「ダブル緩和」で実体経済を刺激できるのかについて市場が疑問視していることを反映している。事実上、中国本土経済は構造問題に直面しており、改革による問題解決しか道が無いが、金融緩和環境の中では、構造問題を解決しようとしても大きな効果を発揮できない。これが、中国本土経済において度重なる「ダブル緩和」実施後も依然として明らかな好転の兆しが見られないことへの釈明となろう。「ダブル緩和」で根本的解決が不可能とは言え、依然として「ダブル緩和」へのニーズはある。なぜなら、金融緩和環境は多かれ少なかれ個人および企業の債務負担を軽減することができるため、経済安定に一定の効果があるからだ。

利下げ後、人民元の1年物預金基準金利は1.5%まで引き下げられたが、インフレ率差し引き後の実質金利は依然プラスとなっている。投資意欲や消費を刺激したいのであれば、中央銀行はマイナス金利環境を実現しなければならない。インフレ圧力がさほど大きくないため、中央銀行には更なる利下げの余地が残されており、マイナス金利環境を続けられる可能性を確保している。緩和措置の効果について言えば、預金準備率の引き下げは利下げほどの効果はない。たとえ預金準備率の引き下げで数千億元の流動性が開放できたとしても、貸付け需要が不足していれば、流動性の高さは意味を成さなくなってしまう。また、中国本土では資本流出の状況が見られることから、資本流出が市場の流動性を低下させ、預金準備率引き下げによる効果を削る可能性がある。

「ダブル緩和」のほか、中央銀行は預金金利の上限撤廃も発表し、中国本土における預金金利の正式な全面市場化が示され、各銀行はこの先、預金金利の水準を自身の需要に応じて自由に定められるようになる。預金保障制度の実施後、預金者は常々預金金利の水準の高さだけを見てどの銀行に預金するのかを決定してきた。預金者の口座開設を獲得するため、各銀行は確実に預金金利を引き上げるだろう。中小銀行の預金規模は大手銀行に及ばないため、預金金利市場化の初期段階で、いずれの中小銀行もそれなりに積極的な努力をするはずだ。競争が激化していけば、銀行は利息差益への圧力に直面していく事になるだろう。

   テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

 

 

 

 

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