- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2015年12月15日]
2016年10月より、人民元が正式にSDRの通貨バスケットに採用されることが決まった。人民元のSDR構成比率は約11%で、米ドルとユーロに次ぐ。人民元のSDR加入成功は、近年における中国の開放改革が国際的に認知されていることを反映しており、加えて、世界に向けて中国がこの先の改革推進の継続を約束していることを象徴している。SDR加入に伴い、人民元の国際市場での地位は更なる向上を見せ、世界の各方面でより広範囲に応用されていくだろう。このほか、人民元のSDR加入によって中国A株がMSCIの構成銘柄に採用される可能性も高まった。香港にとってみれば、人民元の受容性拡大が人民元関連サービス発展の追い風となり、香港の人民元オフショアセンターとしての地位はさらに揺ぎ無い物となるだろう。
近年、中国は世界各国から懐柔の対象として争われており、人民元の国際的地位の向上は、各国と中国がより緊密に経済と貿易関係を発展させる後押しとなる。経済や貿易の発展が加速するにつれ、世界の中央銀行は人民元の備蓄通貨としての保有や、人民元建ての保有資産の比率増加を検討する必要がでてきた。各中央銀行の備蓄需要を刺激することに加え、人民元がSDRの通貨バスケットに加わったことで、同じく人民元建て決済の製品市場の成長も後押しできるため、これから人民元建て決済の製品がより多く流通することが予想される。そして、投資家が人民元の地位向上を足がかりに人民元建て決済の製品関連セクターに投資するか否かについては、これからの人民元の動向が重要なキーとなる。
人民元のSDR加入は、今後の人民元のさらなる市場化を意味しており、中国人民銀行(中央銀行)は為替市場への介入を控えて行くだろう。目下の経済環境では、人民元は更に為替相場を引き下げる余裕があるため、一年あたり数パーセントの人民元安が進んでも想定の範囲内と言える。また、中国本土の政策金利は下降周期にあるものの、米国では金利正常化が始まろうとしており、この金利差も人民元安圧力を加えてしまっている。人民元建て決済の製品関連セクターへの投資は長期保有で見ておかなければならず、現時点で短中期狙いで人民元建て資産の保有を増加する場合、投資家はやや高めの「為替損失」リスクを受け入れなければならないだろう。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
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