- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2015年12月29日]
11月23日より、A株の信用取引における最低保証金比率が50%から100%へ引き上げられた。これは中国政府がA株相場において信用取引による急騰や暴落の動きが現れるのを望んでいないことを物語っている。10月からA株は上昇傾向となっており、上海・シンセン両市場の取引額および信用取引総額が徐々に1兆元を上回る水準へと反発しており、株式投資家が再び過度な借り入れによる投機的売買を行わないよう、中国証券監督管理委員会(CSRC)は確実に株式投資家の情緒を冷却させるよう早急な手を打たなければならない。中国本土経済は今まさに構造改革の重要な時期を迎えており、株式市場における急騰や暴落は間違いなく経済成長の妨げとなる。筆者は、株式市場が「狂騰ぜず、暴騰もしない」状況を確保することが、今や政府にとって重要任務の一つになったと見ている。
短期的にみると、A株の動きはファンダメンタルズから完全に切り離せるだろうが、長期的にみれば、ファンダメンタルズと切っても切り離せなと言えよう。中国経済は依然として減速傾向を抜け出せておらず、信用取引の規制強化によってA株をペースダウンさせることがマイナスばかりになるとは限らない。中国経済の下振れ圧力に軽減が見られ始めれば、管理当局は再び信用取引規制を緩和するだろう。当局は上海総合指数が3,600ポイントを上回れば信用取引の最低保証金比率を引き上げるとしており、A株が3,600以上の水準にあることが合理的であると中国政府がみなしている事を意味する。ファンダメンタルズに明らかな改善がみられるか、もしくは株価上昇に有利となる大型の好材料でも出ない限り、A株は短期で現在の水準から大きく上昇する可能性は低いだろう。
過去に大暴落を経験したことで、多くの証券会社はすでに独自で信用取引の保証金比率を引き上げていた。このため、当局による規制強化は証券会社のビジネス収益にさほど大きな影響を及ぼすことはない。中国国内メディアの報道によると、現行の証券会社が設定している信用取引における保証金比率はおよそ70%、一部の会社では更に引き上げて95%となっており、当局が規制に動くよりも早く、証券会社がマージン取引事業に対し慎重な態度をとっていたことを反映している。A株の以前の急騰と暴落は、場外の信用取引による資本と大いに関係があったため、当局による信用取引規制が株式投資家にまた別の方法で資金を借り入れて投機的売買させてしまわないか、よく注意して見守るべきだろう。当局は、勢いを失った場外信用取引が再び息を吹き返さないよう、これを防止せねばならない。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
香港強制性公積金計劃管理局 (MPFA: Mandatory Provident Fund Schemes Authority) の正規取扱代理店です。
香港保険業監管局 (IA: Insurance Authority) に正式登録されているライセンス保有代理店です。