- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2016年4月20日]
ある大手投資銀行のレポートではHSBCホールディングス(00005)の低迷が報告されており、もし中国本土経済がハードランディングとなれば、HSBCの株価は28元下落する可能性があると指摘し、これはリーマンショック時の水準となる。この大手投資銀行の見解について、投資家は真に受けすぎる必要はない。なぜなら株価の底値がどうなるかはしばしば市場の投資情緒に決定されるものであり、ましてや大手投資銀行の予測はあくまで中国経済がハードランディングした場合に仮定されているからだ。HSBCの底値が28元となる可能性については筆者も判断しかねるが、確実な事は、多くの不確定要因に苦しむ中、HSBCが不況を脱するのは決して容易ではないということだ。
サブプライム危機の後、HSBCは業務再編に力を尽くしてきたものの、グループは終始新たな成長部分を生み出せていない。銀行業は「全商業の柱」であり、世界経済で下振れリスクが高まるにつれ、HSBCの経営圧力も増大する。本来、米利上げで銀行の金利差拡大が後押しされるはずが、投機的資金が氾濫し米利上げペースの鈍化が影響し、超低金利環境を変えることは今のところ難しい。銀行の金利差は引き続き圧力を受ける恐れがあり、当然HSBCも同様に影響を受けよう。
経済制限を受ける要因のほか、管理当局による規制強化もHSBCの経営コストの重石となっている。金融危機の再発を防止するため、主要国の金融管理機関はサブプライム危機後に総じて銀行業への規制を強化し、新たな管理措置が銀行の商売を困難にしている。最近発生した「パナマ文書」騒ぎの影響で、オフショア企業を利用し脱税しようとする人々がいることに対し世界の多くの国が関心を集めており、一部の国では調査開始を表明している。銀行は資金調達の主要ルートであるため、「パナマ文書」事件が銀行業に対する管理規制をさらに厳しくさせる可能性もある。
イギリスは6月に欧州連合離脱是非を問う国民投票が行われる。もし「離脱」が決まれば、イギリス自身だけではなく、世界の金融市場で変動を引き起こす可能性が有る。HSBCはイギリス資本を背景とした国際的な大手銀行であり、「EU離脱」はHSBCに対し確実に影響すると見られ、問題は、影響の大きさと機関の長さがどうなるかということになる。国民投票が行われるまで、HSBCのパフォーマンスはイギリス「EU離脱」懸念の影響を受けるだろう。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
香港強制性公積金計劃管理局 (MPFA: Mandatory Provident Fund Schemes Authority) の正規取扱代理店です。
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