ファンド解約の一時停止がドミノ現象を引き起こすか

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ファンド解約の一時停止がドミノ現象を引き起こすか

[2016年8月2日]

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英国の「EU離脱」が引き起こした後遺症が続々と明らかになっている。多数の英国不動産ファンドが、解約請求圧力が増したことを受けて解約の一時停止を発表している。解約を一時停止した不動産ファンドは英国の商用不動産を保有しており、不動産は流動性が低めの資産に属するため、短期間で大量に対処する事は現実的に難しい。安価での不動産売却を回避し、投資家の利益を確保するために、ファンド会社が解約を一時停止することは理解できる。ある分析によると、投資家たちは少なくとも半年間待った後にようやく資金を回収できるようになるだろうとしている。しかし、もし解約申請の規模が膨らみ続ければ、投資家が資金を回収できるまでの期間はさらに延期されるだろう。

ファンド解約の一時停止によって大量の資金がロックされる事になるため、もし投資家が早急に資金を要する場合、その他の資産を売却することで現金化を図るため、ファンド解約の一時停止が「ドミノ現象」をもたらす可能性が見て取れるだろう。実のところ、ファンドの解約一時停止は目新しい出来事では無く、2008年の金融危機の際にも、大量のファンドが流動性を要因として解約を一時停止したことがある。英国の「EU離脱」が最終的にどれほどのファンドを解約一時停止に追い込んでしまうのか、現段階では予測が難しいものの、より確かなことは、更に多くのファンドが解約の一時停止に追い込まれ、世界の金融市場が受ける圧力がさらに大きくなるということである。

イギリスのほか、イタリア政治経済の先行きも、マーケットが注目するもう一つの焦点となっている。イタリアは10月に憲法改正を問う国民投票が行われる予定で、国民投票結果はイタリアの政局に対して重要な影響を与えることになる。もし国民投票で改憲が決定すれば、イタリアの政治情勢は比較的安定する可能性があるが、これに反する結果となった場合、現地の政局見通しは不確定的へと転じてしまい、近年盛んなポピュリズムにも激化リスクをもたらすことになろう。

経済面では、イタリアで銀行融資の17%が不良債権化していることが懸念されている。EUの規定により、納税者からの救助資金を得る前に、必ず当該銀行の株主や債権者と一部の預金者がまず先に損失を引き受けねばならならないが、イタリアはわざと規定をすっ飛ばして直接銀行への援助を提供しており、ドイツはすでにイタリアに対し財政規定を尊重するよう警告していることから、ドイツ・イタリア間の亀裂が、銀行救済のチャンスを阻むことになるかもしれない。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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