利上げペースダウンは今後使える手段失う可能性

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利上げペースダウンは今後使える手段失う可能性

[2017年7月26日]

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少し前に、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は米下院金融委員会の公聴会において、米国インフレ率が目標に達しておらず、当局は密接にインフレ情況を監視するとし、また、インフレ率の目標達成は可能であると確信しており、さほど大きく利上げをせずとも中性水準に達するとの予想を示した。イエレン氏の発言から、FRBが利上げペースを落とすつもりであると解読されている。もともと、市場では米国が年末にもう一度利上げをするとみていたが、イエレン氏の発言によって利上げ予測の加熱がクールダウンすると予想される。調査によれば、12月の利上げの可能性は4割余りにとどまるとしている。

米国の雇用市場は好調であるものの、インフレ率がなかなか目標に達していない背景には、5つの可能性がある。第1に、原油安が続き、低めの生産コストを維持していること。第2に、科学技術の応用で生産コストの圧力が緩和され、物価上昇のペースが落ち、科学技術の後押しがある中で「インフレ率は低いまま、経済パフォーマンスは理想的に」が新たな常態になりつつあること。第3に、サラリーマン層がまだ経済効果を享受できていない、つまり、雇用市場が上向きつつも給料の増加には至っていないこと。第4に、雇用市場における需要の高まりから明らかな物価上昇が反映されるまでには時間を要するため、現時点でのインフレ率がまだ停滞したデータであること。そして第5に、米国経済には懸念が潜んでおり、中長期先行きでは弱化の可能性があることだ。

インフレ率が目標に達していない状況では、FRB は確かに利上げペースを引き上げる必要はない。しかし利上げペースをダウンすると、FRBは別の困難な局面に陥る恐れが出てくる。インフレ率が目標に達していないことで、FRBが金利の中性水準への回復目標を延期した場合、ひとたび米国経済が弱転してしまうと、先々で利下げの余地が不足してしまうのだ。現在経済パフォーマンスが理想的である中、たとえインフレ率が目標に達していなくとも、FRBは予定通りの利上げペースを維持することで、今後経済下落の際に使えるツールを失うことを回避する可能性がある。事実上、年明けからこれまで、米国10年および30年物国債の利率は波打ち下落となっており、長期国債利回りの弱化は米国経済が長期見通しで弱転するリスクを暗示している。その他、バランスシート縮小が米国経済にどのように影響するかも、この先の利上げペースを左右することになるだろう。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム 
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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