高齢化が香港財政のしこりに

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高齢化が香港財政のしこりに

[2017年10月6日]

今年5月、米格付け会社ムーディーズは同日に中国と香港の貸付け等級の引き下げを決定したが、ムーディーズの挙動に対し、市場では意外感は無かったはずだ。なぜならムーディーズが昨年の早い段階ですでに中国・香港の見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げていたためだ。「先に見通しを引き下げてから、後に信用格付けを引き下げる」のは格付け機関の一貫したやり方だ。信用格付けの引き下げに伴い、中国・香港の債券発行コストは増加すると見られ、債務負担が比較的重い企業が主な被害者となるだろう。だが幸い、格下げと同時に、ムーディーズは中国・香港の先行きを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げており、中国・香港がこの先ふたたび格下げとなる可能性は高くないことを意味している。

ムーディーズの根拠によれば、香港の格下げの要因の一つとして、中国・香港間の非常に密接な経済・貿易関係を指摘しているが、ムーディーズのこの論理を、筆者は完全には同意しない。まず、香港では返還後「一国二制度」が実施されているため、「一国二制度」のもと、香港の貸付けは中国と分けて処理するべきだ。そして、中国は世界第2位の経済大国であるため、中国と経済関係が密接な国は実に多い。もし経済・貿易関係の密接度によって格付けを行うのであれば、世界中で中国とともに格下げとなる国が当然多く発生するのではないだろうか。

特区政府が1兆元近くの財政準備金を保有していることに加え、今年の第1四半期の経済成長率が4.3%増であることを考慮すれば、香港の大型企業の財政状況はおしなべて健康な水準である。そのため香港が中国と共に格下げ扱いとなるのは異議が残る。確かに筆者は香港の格下げ理由に完全には同意しないものの、香港の信用の見通しはより広範囲に注目すべきだと考える。香港はすでに高齢化時代に突入しており、雇用市場が弱化し、政府の財政状況は長期的圧力を抱えている。そのほか、香港政府の収入は不動産への依存が非常に大きいため、ひとたび不動産市場の加熱が冷え込みに転じれば、財政収入は大きく減少するだろう。十分な財政維持を確保するべく、政府はできるだけ早く課税基礎を拡大するべきであろう。

 

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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