パウエル氏は債券市場の危機出現を防げるか

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パウエル氏は債券市場の危機出現を防げるか

[2017年11月27日]

トランプ米大統領が米連邦準備理事会(FRB)の次期議長にジェローム・パウエル氏を指名したものの、パウエル氏の任命は議会上院の承認手続きを待たねばならない。パウエル氏は長年FRB理事を務めており、彼がイエレン氏の支持者であることから、市場ではパウエル氏がハト派の人物であると見ている。一般的に、パウエル氏はイエレン氏の金融政策を継続する、つまり、秩序ある利上げとバランスシート縮小を続ける可能性が高いと見られている。そのほか、公開演説の場において、パウエル氏はこれまで金融危機後の金融規制に対し適度な緩和を考慮するべきだと示しており、市場はパウエル氏の就任が金融業界発展の好材料となる可能性が高いと見ている。

パウエル氏が経済学の学位を保有していないことに疑問を呈する報道が出ており、FRB議長への就任に懸念が浮上している。パウエル氏は経済学の学位を保有していないものの、金融危機の対処に非常に豊富な経験を持っている。ブッシュ・シニアの時代において、パウエル氏はすでに財務次官補を務めており、当時の「ポンド危機(ブラック・ウェンズデー)」やソロモン・ブラザーズ問題に対処している。パウエル氏の経歴や危機対応能力から、筆者はパウエル氏にはFRBの非常に挑戦的な任務に堪えられるだけの能力を持っていると見ている。

米国の現状を総合的に見ると、パウエル氏は将来的に、主に二つの要因に挑戦することになりそうだ。第一に、インフレ率がなかなか目標値に達していないこと。そして第二に、国債利回りの上昇が続いていることだ。雇用市場が好調な中、インフレ率が遅々として目標に達していない。なぜインフレ率が低水準を続けるのか、市場では今なお統一した見解が出ていない。もしインフレ率の低迷によって経済問題が出現した場合、パウエル氏は絶妙な時期に金融政策の調整を行う必要がある。

FRBはすでに10月からバランスシートの縮小を開始しており、10年債の利回りも2.02%の低水準から上昇に転じている。債券王とも呼ばれる投資家のグロス氏が、もし債券利回りが2.4%を突破すれば、債券市場は弱気相場に踏み入ると警告している。バランスシート縮小が影響する中、米債券への投資者は債券保有減少の動きをとるだろう。債券利回りの上昇に従い、借り入れコストも上昇していき、利息支払いの増加が企業に圧力をもたらすだろう。就任後、バランスシートを縮小する中で、パウエル氏が如何にして債券市場の弱気相場を回避させるのかで、彼の能力が試されることになるだろう。

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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