中国資金の緊縮措置が香港株の足かせに

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中国資金の緊縮措置が香港株の足かせに

[2018年9月4日]

世界の主要株式市場の中でも、明らかに香港株のパフォーマンスは弱々しく、多くの人々が中米貿易戦争の勃発が要因であると見ている。世界を全体的見ると、米国と貿易戦争を起こしている国は中国だけではないのだが、香港株式市場を除く主要マーケットではまだ明らかな弱化は見られないことから、香港株弱化の要因が中米貿易戦争の勃発であるとするのは十分な説明にならないだろう。ここ数年の高値から計算すると、ハンセン指数の下落は6千ポイントを超え、多くの主要銘柄が3割かそれ以上の下落となっている。経済が安定成長を維持し、企業の利潤が大幅な減退を見せていないなかで、香港株が大幅に弱含みとなるケースは実際にはあまり見かけない。株式市場の上下変動は資金の流動性が関連しており、香港株式市場からの資金流出は中国本土資金の引き締めが関連している。

昨年の香港株式市場の上昇は、「北水(中国本土の金融緩和によるホットマネー)」の功績であった事実は否めない。香港ハンセン指数が年明けに史上最高値を更新した後は「北水」流入の勢いが回復せず、近月再び「北水」の継続的な流出の兆しが見られる。中国本土投資家による資金引き上げは、昨年の香港株の大幅上昇でもたらされた利益確定の可能性があるほか、中国本土の資金循環断裂による投資家の株式保有高減少も要因になっている。今年に入ってから、中国におけるデフォルト(債務不履行)発生やオンライン融資プラットフォームの閉鎖、自転車シェア企業の倒産などのニュースがたびたび報じられている。これらの報道は中国本土に流動性問題が存在していることを反映しており、資金循環が受ける圧力は中国政府が近年高レバレッジ解消(デレバレッジ)に大きく力を入れていることと関連している可能性がある。

レバレッジ解消のほか、米国の利上げ継続とドル高化も中国の金融情勢を逼迫させている。レバレッジ解消が進むなか、中国企業は融資を得にくくなっており、多くの企業が国外でのドル建て社債の発行を余儀なくされ、その多くが不動産企業となっている。上半期に中国不動産企業が発行した社債は300億ドルを上回っており、昨年比5割増となっている。米利上げとドル高化のもとで、企業のドル建て債の返済負担は増加が続くだろう。市場予想では、米国は年内に2度の利上げを行うと見られており、人民元も貿易戦争によって更に下落する可能性があり、中国企業の流動性の先行きは依然としてドル建て債を要因とした影響を受けることになるだろう。

中国・香港は密接な相互関係がある。中国本土資金が受ける圧力は早期解決とは行かないため、香港株式市場が強勢を回復するのは難しいだろう。現在の情勢に直面して、中国はすでに緩和措置をとっており、インフラ建設への投資や市場流動性の拡大を含む、より多くの緩和政策がこの先登場すると予想される。再び緩和による市場の乱れを起こさないよう、中国はくれぐれも慎重に資金配置を処理しなければならない。さもなくば、たとえ中国経済が短期的に難関を突破できても、長期的には新たな悪循環に陥る恐れがあるだろう。

 

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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