人工知能が引き起こす米中対立

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人工知能が引き起こす米中対立

[2025年2月10日]

前回の記事では人工知能(AI)の発展に関する見解をいくつか述べたが、今回も再びAIについて語らざるを得ない。というのも、中国のDeepseekの登場で米中間の新たな対立が引き起こされたことにより、米中の覇権争いはさらに激化すると考えられるからだ。実際、米中の対立はすでに2018年には兆候が見られていたものの、当時はそれほど重要視されていなかった。なぜなら、中国は主に低価格の生活用品を生産する国と見なされ、技術分野ではアメリカに対して優位性を持たなかったことと、一方でアメリカはテクノロジー分野で長年にわたり世界をリードしてきたため、中国の本格的な台頭を抑え込めると確信していたからだ。結局のところ、ある国がトイレットペーパーやバナナの生産で世界一になったとしても、大国の実力を揺るがすことは難しい。たとえ中国が自前の技術製品を開発していたとしても、その部品の半数以上、さらには最も重要な部分がアメリカの技術に依存している限り、中国がアメリカの覇権に挑むのは困難だった。

しかし、最近登場した中国のDeepseekが、この状況を一変させる可能性を示している。ひとつには、中国がAIの研究開発で大きなブレイクスルーを達成し、これまでの技術的な遅れを克服しつつあることを示唆している。もうひとつは、中国が開発したAIモデルのコストが大幅に削減されたことで、より多くの中小国がAI技術を活用できるようになり、最終的には技術革新の恩恵を広く共有できる点である。これにより、アメリカのテクノロジー独占体制は脅かされ、その優位性が揺らぐことになる。

現在、アメリカはこのAI競争に対抗するための初期段階として、中国のAI企業がアメリカの技術を盗用していないかを徹底的に調査し大々的に問題視しようとしているものの、これだけでは実効的な対抗策とはなりえない。また、トランプ大統領が対中制裁を強化し、関税を引き上げることで中国を封じ込めようとする動きもあるが、その効果はすでに誰の目にも明らかだ。いくらアメリカが関税政策を駆使しても、中国の生産拠点をアメリカに呼び戻すことは困難であり、むしろアメリカ国内のインフレを加速させる結果となる。さらに、カナダやメキシコといった隣国の同盟国を巻き込めば、アメリカ自身が四面楚歌に陥る可能性もある。

次の段階として、アメリカは半導体の研究開発および生産の強化に注力し、技術的優位性を維持することで覇権を確立しようとするだろう。しかし、いくら技術が進化しても、それをアメリカ国内でのみ開発・生産するとなると、コストが高騰し市場に受け入れられにくくなる。これは、かつてのBETA方式のビデオテープ対VHS方式の競争と似ている。当時、高品質なBETA方式は存在したものの、最終的には低コストで普及しやすいVHS方式が市場を制した。残念ながらアメリカがVHSを作成することは容易ではない。なぜなら、高い教育コストが開発・製造コストを押し上げ、競争力を失うリスクがあるためだ。この点で、アメリカはすでに不利な立場にあると言える。もちろん、覇権を守る最後の手段としては「殲滅戦」——すなわち全面戦争の可能性も考えられる。しかし、それは第三次世界大戦を引き起こすことになりかねず、現時点でその可能性や時期を予測するのは時期尚早である。

結局のところ、大国間の覇権争いは全面的かつ避けられない正面衝突へと発展する可能性が高い。こうした状況において、投資家にとって最も重要なのはリスク管理である。選択肢の一つは、市場から一旦撤退し、静観する。二つ目の選択肢は、リスクを分散しながら、どちらの陣営が最終的な勝者となるかを見極めることだ。いずれの選択肢も、それぞれのリスクとリターンが伴う。たとえ大きなリターンを期待できたとしても、その過程での市場の大きな変動のリスクに耐えられなければならない。

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