香港ドルは再び避難港となるのか

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香港ドルは再び避難港となるのか

[2015年9月16日]

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近頃、香港ドルがしきりに許容変動幅の上限(1米ドル=7.75香港ドル)に達しており、金融管理局は香港ドルの強勢を緩和するべく何度も香港ドルの売却を行っている。これまで、香港ドルが上昇傾向にある時はほぼ香港株式市場の高パフォーマンスを刺激することができたが、近頃では為替相場の強勢が株式市場に上昇の動力をもたらすに至っておらず、むしろ、より大きな薄商いとなっている。なぜなら、香港ドルの近頃の強勢は、人民元の先行きに望みが薄いことが原因と見なされているからだ。近月の経済指標では、中国本土経済の続落が示されており、経済安定化を目的として、中国人民銀行(中央銀行)が更なる人民元安を進める可能性が高いと見られている。更なる人民元安の予想がある中、人民元から資金が巻戻る流れは一定期間続く可能性がある。香港へ資金が流入するにつれ、現地銀行システムでは更に余剰が増している。流動性が高まる状況下で、たとえ米国が今月利上げを宣言することになっても、香港は追随しないという選択もできるため、これも人民元からの資金巻戻りが香港にもたらすメリットの一つと言えるだろう。

香港へ巻戻った資金が最終的に株式市場や不動産市場に流入すると見る者もいるようだが、筆者は現在のところ同意し難い。資金が市場に出回る条件として、資産市場が合理的なリターンを提供ができるかどうかが重要となる。現在の経済環境で、香港の株式市場や不動産への投資はいずれも多くのリスク要因に直面しているため、還流資金は銀行システム内に据え置かれ、中国本土経済が市場からの信頼を回復するのを待ってから本土へ戻される可能性が高い。率直に言って、投機的資金が株式市場に流れ込むことが決してプラスとは限らない。もし香港の株式市場が投機的資金の流入だけで上昇し、本質となるファンダメンタルズを欠いたサポートとなった場合、株式市場は短期間で急騰からの急落が起こる恐れがある。こういった情況はここ数か月の香港株やA株そのものなのだ。

少し前に、中国人民銀行の周小川総裁は20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、人民元が長期的な下落となる基礎は存在しないと示しており、この発言が一定期間人民元に対する見解を鎮静させられる可能性があるものの、更なる人民元安予想を覆すには、まず中国経済が回復しているシグナルをしっかりと発信しなければならない。中国はすでに多くの経済刺激措置を打ち出しており、もしこの先数か月も依然として結果が出てこなかった場合、人民元安予想の熱はさらに高まると見られる。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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