米国経済に減速リスクあり

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米国経済に減速リスクあり

[2016年8月30日]

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最近、何名かの米FRB関係者がタカ派の発言をしており、重要人物であるグリーンスパン元FRB議長からも米国が早期に利上げするだろうとの発言が出ている。FRBは最近しきりに「タカ派」の雰囲気を見せるものの、筆者は当局の利上げの可能性はさほど大きくないと見ている。その理由として、米国経済が懸念材料を秘めていることが挙げられる。過去5四半期にわたり、米国の個人消費支出は縮小傾向が見られ、前期比で更なるマイナス幅を記録している。過去のデータを参考にすると、経済が減速または衰退する直前に、個人消費支出の変化においていつもマイナス傾向が現れていることがわかる。もしこのマイナス傾向が続けば、企業はリストラに着手し、米国経済が雇用市場の悪化で明らかな減速に転ずるだろう。

個人消費支出の縮小が懸念されるほか、ダウ輸送株指数の動きが三大指数を追随していない点も注目に値する。ダウ輸送株指数にまだ理想的なパフォーマンスが見られず、米国の運輸業がある程度の景気不振に直面していることを反映している。運輸業の経営状況は経済パフォーマンスと密接な関係にあるため、経済パフォーマンスが力強い時には、運輸業も好業績に繋がるものの、逆もまた然りとなる。ダウ運送株指数が弱勢であることから推測すると、米国経済が減速しつつある可能性が有るということになろう。

また、米国株の高すぎる評価額や債券市場に内在するバブルもFRBの金利政策に影響している。現在、米国株の株価収益率(PER)は史上最高水準となっており、その上世界で多くの国々で債券利回りがマイナスへ落ち込んでいる。もしこのタイミングで利上げを行えば、株式も債券も大幅に調整が入る恐れがあり、FRBは永遠に罪人扱いを受ける事になるだろう。そして、米国は11月に大統領選を控え、総選挙前に利上げを行えばすぐさまFRBは政治争いの渦中に陥ってしまうだろう。つまり、たとえ利上げ需要があったとしても、そのタイミングは総選挙の後になるはずだ。

上述のリスク要因がクリアにならない限り、FRBが利上げに急ぐことは考えにくい。しかし、当局への大衆からの信頼性や、昨年末に決定した利上げ予定の正確性を維持するためにも、FRBがこの先も利上げ条件の情報を発信し続け、利上げ予測を維持させると見られる。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム 
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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