政府の責任は市場安定の維持のみ

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政府の責任は市場安定の維持のみ

[2015年5月6日]

P1少し前に、中国政府系メディアから出された多くの記事で、A株の上昇は理にかなったサポートに基づくものであると示されている。こういった中央政府からの祝福を追い風に、当然のごとくA株はさらなる上昇を見せているが、さすがにA株高騰に過熱感が否めず、ついには数日前にCSRC (中国証券監督管理委員会)が株式投資家に向けて再び「親切な注意喚起」を行い、盲目的な流行追随を控えるよう促すとともに、株式市場参入前に十分なリテラシーを備えるよう呼びかけている。A株の狂騰に直面し、信用取引の融資残高は1.8兆人民元にまで増加しており、システマチックリスクを低下させるため、CSRCが株式投資家に「冷水」をかける動きに出るのも理解できる。政府系メディアが折につけてA株上昇を援護する点に、筆者は保留の態度を保っている。

政府系メディアは株式市場を援護するために、政府がA株の上昇を強く願っているかの様に連想させれば、株式投資家に競ってエントリーさせる効果があるとの考えもあるようだ。だが事実上、政府の責任範囲はあくまで安定した金融システムを確保する事であり、相場の上下は市場の需要と供給によって決定されるべきものである。世界の主要な市場を見渡しても、政府が相場の上下に対し口を出して介入する事があると耳にするのは極僅かだ。例えば香港では、株式市場が過熱した際に、政府方はひたすらリスクの注意喚起に徹し、投資家達に対して自力相応のエントリーを行うよう呼びかけた。近年、中国政府は懸命にA株の国際化を進めているが、国際市場との連結を成功させるには、頻繁に株式相場を左右する言動をとるような事は絶対にあってはならず、管理監督という本来の役割を遂行すれば十分なのだ。

これまで、A株が暴落するたびに、多くの株式投資家は政府に失敗の責任転嫁をしてきた。その要因は、政府が頻繁に株式市場のパフォーマンスに介入してきたことと関係がある。中国本土の株式投資家は莫大な数で、ひとたび株式投資家達が損失の責任を政府になすりつけ出すと、社会は不安定となってしまう。過去20数年の間に、中国の株式市場は何度か暴騰や暴落を経験しており、今こそが中国本土の株式投資家達が成熟を始める時であると言えよう。株式投資家たちの成熟度を高めるには、投資家達に必要なリテラシーを強化する教育が非常に重要であり、教育を通して、株式投資家たちは投資リスクを明確にし、自身が引き受けるべき責任を理解できるだろう。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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