- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2015年8月5日]
米ドル強勢と需要低下が足かせとなり、金価格や原油価格など、コモディティ市場でここ最近続落が見られる。金相場は1,100ドルの重要な関所を守れず、NY原油相場でも50ドルを割り込んだ。金および原油の今後の相場に対して筆者はさほど期待できないと見ている。なぜなら、コモディティ市場の足かせとなっている要因の短期間での好転は見込み難いからだ。
まず金についてだが、金を購入する人々は一般的に「リスク回避」および「インフレ対策」の2つを目的としている。世界の当面の情勢からすると、それぞれ主要なエリアや国々では短期的に金融危機の可能性はほぼ無く、インフレ圧力急上昇の可能性も見られない。こういったリスク回避不要でインフレ圧力もさほど高くない状況では、金投資は確実に魅力を失う。また、中国本土の「マダム」達による金価格暴落の際の買い漁りも見られず、中国人民銀行(中央銀行)が公表した金保有高も市場予想を下回っていた。加えて、米ドル為替相場は利上げ見込みによるサポートを受けており、上述の要因同様に金価格の見通しにとってはマイナス材料となる。従来より9月と年末はインド人および中国人による金購入のピークシーズンと言われており、これらの時期に比較的良いパフォーマンスとなるか否かに着目したい。
原油価格については、米ドルがとにかく強いことに加え、供給が需要を上回っていることもマイナス材料の一つとなっている。中国、欧州などで経済鈍化が続いていることも原油の供給過剰を招いている。またイラン核協議が最終合意に達成したことから、米国がイランに対する経済制裁を解消すると見られ、イランの原油生産量が一日あたり100万バレル増加すると予想されている。イランが原油の輸出を再開し、世界の原油供給量が激増することになれば、原油値段はさらなる圧力を受ける恐れがあるだろう。
原油価格の低下は物価上昇を抑える効果があるため、このような状況では金を購入し資産を保有する必要性も薄まることから、原油価格の下落が金投資の価値を弱めてしまう可能性が見て取れよう。原油価格の弱勢は好転が難しいものの、来年の米大統領選に出馬を表明しているジェブ・ブッシュ氏が一族で石油業界と密接した関係を持っているため、彼が候補者になったことが好材料視され、原油価格が反発する可能性もある。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
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