ECBの「放水」(金融緩和)に大きな効果望めずか

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ECBの「放水」(金融緩和)に大きな効果望めずか

[2016年3月22日]

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経済救済のためにECB(欧州中央銀行)は「放水」(金融緩和)の規模を拡大。翌日物預金金利をマイナス0.3%からマイナス0.4%に引き下げ、毎月の国債購入規模を800億ユーロへ拡大、再融資金利を0%へ引き下げ、翌日物貸付金利を0.25%へ引き下げる等の措置が含まれている。総合的に見て、ECBの追加緩和は市場予測よりも積極的であったことは、ドラキ総裁が市場を失望させたくなかったことと関係するだろう。昨年12月の理事会後、ドラキ総裁は市場予想を下回る規模の刺激措置を表明し、市場の失望を招いてしまった経緯がある。

マイナス金利環境の深刻化に直面し、欧州の銀行業界が受ける圧力とリスクはさらに増大しており、コストを預金者にでも転嫁しない限り、銀行は営業収益にダメージを受ける恐れがある。銀行が利潤能力を損なう可能性があるほか、マイナス金利環境は容易に金融バブルに繋がってしまうため、すでにECBに対し、マイナス金利政策に潜むリスクを注視するよう求める警告を出した銀行も現れている。こういった銀行からの警告と関係があるかどうかは不明だが、ドラギ総裁は意外にもさらなる利下げの必要性があるとしている。もしECBがこれ以上利下げを行わない場合、現地の政策金利は現状レベルで安定する見込みがあり、銀行業の懸念や負担の緩和を後押しするだろう。しかし、更なる利下げはユーロ高化を招き、ユーロ高から経済回復を妨げられ、インフレ率をECBの目標まで反発させることは難しくなるだろう。

ドラキ総裁は記者会見上で、全面的な刺激措置で、確固たる経済回復の勢い付けができるとしており、この発言から措置の効果に非常に自信を持っている様子だ。しかしECBが今年と来年の二年間のインフレ率目標を下方修正していることから、ドラキ総裁が先行きに対し、十分な自信を持っていないことが示される。事実上、ユーロ圏において経済の重石となっているのは主に構造問題であるため、「放水」はただ短期的な緩和作用を発生させるだけである。困難な局面を脱するには、欧州各国は背水の陣を敷いて、心して改革を実行しなければならないだろう。しかし、政治屋の大部分は短期的利益や目前の安定しか考慮しないため、真摯に改革を実行することは口で言うほど容易ではないはずだ。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

 

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