中国本土銀行先行き、なお経済圧力受ける

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中国本土銀行先行き、なお経済圧力受ける

[2016年4月15日]

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発表されたばかりの中国国内銀行株の業績を総合して見ると、大まかに3つの特徴に集約できる。まず第1に、収益成長動力の弱化が続いており、たとえ増加が見られても、一桁台どまりとなっている。第2に、資産の質の更なる悪化が見られ、不良債権が2倍増で増加傾向が続く。そして第3に、配当性向をできるだけ維持しようと、主要な本土銀行ではやむなく前年度を下回る配当となっている。本土系銀行株を買い入れて配当を得ようとする投資家にとってみれば、銀行側が配当率を減少傾向にしていることは当然好ましくない材料となる。経済先行きが弱まるなか、本土系銀行が多めに利益を確保して冬を越そうとするのも理解できよう。本土系銀行株から配当を得る投資家は、銀行側がさらに配当率を引き下げる可能性に心理的準備をしておく必要がある。

最近、ある報道では、中国政府が貸倒引当金による不良債権引当率の引き下げを許可する意向であるとしている。本土系銀行からすれば、不良債権引当率の引き下げは流動性を高める後押しとなるものの、資産の質を改善させる後押しにはならない。なぜなら、返済能力の乏しい企業や個人が、不良債権引当率の引き下げによって返済能力が有るように変化させることなどできないからだ。不良債権引当率引き下げのほか、企業の「株式による債務返済」をよく検討する事がもう一つの焦点となる。

「株式による債務返済」は本土系銀行の不良債権リスクを緩和できるうえ、企業と銀行間の債務再編協議にも役立つ。しかし、「株式による債務返済」をせざるをえない企業とは一般的にファンダメンタルズに欠けている企業であろうから、これらの企業の株式を保有する事は確実にリスクの高い投資と言える。企業のファンダメンタルズが改善しない限り、最終的に「株式による債務返済」によって本土系銀行は大量に質の悪い株式を保有することになる恐れがある。また、「株式による債務返済」は本土系銀行の資本水準に潜在的圧力を構成する可能性があり、銀行は今後資本補充を行う可能性が高まるだろう。つまり、「株式による債務返済」が行われる中、企業は「金が返せなければ、株で返せばいい」といった心理状態を形成する可能性があり、このような心理状態は企業のリスク管理に対する意識を弱めてしまうだろう。上述の様々な状況を振り返ると、「株式による債務返済」の推進を決定する前に、政府は注意深く検討し、さまざまな利害を見定める必要があるだろう。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム 
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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