- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2016年9月28日]
英国の中央銀行、イングランド銀行(BOE)は少し前に25ベーシスポイント(bp)の利下げと、債券購入規模の拡大を発表した。「EU離脱」騒動の後、カーニーBOE総裁は英国経済が減速するだろうと発言していたため、この発言から推測すれば、英国の利下げや金融緩和拡大決定は予想の範囲内だったと言えよう。英国の「EU離脱」騒動後の経済情勢は予想よりも理想的ではあるが、カンリフBOE副総裁は英国経済の不確定性が継続する恐れがあると見ており、この見解は英国が年内に更なる利下げを行う兆しであるとも言えそうだ。
経済面と比べ、イギリスの政治面における先行きもまた不透明だ。「EU離脱」問題は英国社会を深刻に分断し、英国・EUの関係性も緊張感が増している。テリーザ・メイ新党首は就任後すぐ山積みの難題に取り組む中で、英国社会の再団結だけでなく、EUとの「EU離脱」交渉を展開しなければならない。もしいずれかの過程で誤りが発生すれば、英国だけでなく欧州全体が損失を被ることになろう。
メイ首相は「EU残留」を支持していたものの、「EU離脱」の重要人物であったボリス・ジョンソン氏を外相に任命していることから、メイ首相の度量が十分なことは明らかだ。その他、メイ首相は就任後すでに、国民は皆「EU離脱」の是非にいつまでも固執するべきではなく、国民の力をあわせてどのように最も優れた英国の「EU離脱」条件を得られるかに努力するべきだとしており、この動きはメイ首相が現実を見据えて正しい行動をとる人物であることを反映している。つまり、「EU離脱」問題から派生する後続問題に対処することについて、マーケットではメイ首相に対しある程度の期待が寄せられているということだ。
マーケットではメイ首相がいつ「EU離脱」の手続きを開始するのかに注目しているが、メイ首相はともすれば「まずは国内の安定を優先し、その後外交関係を築く」といった手順をとる可能性があり、英国内部の再団結を待った後で、ようやく「EU離脱」の手続きを開始すると見られる。投資家やビジネス界からの信頼を回復するには、英国はできるだけ早くEUと離脱交渉を進めなければならない。考えてみてほしい、もし英国の先行きがぐずついて不透明であれば、あなたは英国に投資するだろうか?今現在視界が遮られる中、英国株が「EU離脱」騒動以前より高い水準であるのは理にかなっていない。このため、この先の相場はリスク回避の売り圧力が日に日に増加するだろう。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
香港強制性公積金計劃管理局 (MPFA: Mandatory Provident Fund Schemes Authority) の正規取扱代理店です。
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