- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2016年10月12日]
米大統領選に関心が集まるなか、ドイツ銀行の危機も市場の焦点となっている。ここ最近、ドイツ銀行は相次ぐマイナス報道に苦しんでいる。米国司法省から桁外れの罰金が科されたことや、ドイツのメルケル首相からの公的支援の否定、顧客であるヘッジファンドの資金引きあげなど、一連のマイナス材料が株価急落を触発しており、ドイツ銀行危機が最終的に金融危機へ発展する可能性を懸念する投資家もいる。実のところ、ドイツ銀行が直面する問題は最近になって浮上したわけではなく、今年初めにはドイツ銀行が発行する偶発転換社債(Contingent Convertible Bonds /CoCo債)がすでに市場の焦点となっていた。
リーマンショックの後、多くの銀行がCoCo債を発行してきた。資本補充のための資金集めを目的として、銀行の自己資本水準が一定の基準を下回った際に、銀行がCoCo債保有者への配当を停止すると同時に保有者に対し債券の株式化を要求できるものとなっている。しかし、銀行の資本が実際に補充を要する事態になった場合、銀行経営に問題が起きている可能性が高いため、CoCo債はこぞって投げ売りされる有毒資産となってしまうのだ。
懸念が高まるにつれ、ドイツ銀行が発行したCoCo債の投げ売りはすすんでいる。もしドイツ銀行の情況が更に悪化すれば、この先も投げ売りの流れは続くだろう。極限に達した状況で、投げ売りされたCoCo債を買う者はおそらくいないだろう。こうなると金融市場に恐慌の可能性が浮上し、システミック・リスクも顕著に上昇するだろう。財政経済ブロガーの指摘では、ドイツ銀行の金融派生ツールは550億ユーロを上回る規模であり、ドイツとユーロ圏におけるGDPのそれぞれ20倍および5倍となっていることから、ひとたびドイツ銀行危機がシステミック・リスクを誘発すれば、解決困難な結果を招くだろうとしている。
メルケル首相はドイツ銀行を支援しないとの報道があるものの、リーマンショックの教訓からすれば、ドイツ政府と欧州委員会は土壇場になって、財政支援や業務再編協力などを含み、ドイツ銀行に協力する可能性はまだある。しかし、政府方がドイツ銀行への支援を表明するまで、ドイツ銀行問題は引き続き深刻化する可能性があるため、今後も世界の金融市場はドイツ銀行危機を材料に再び大幅変動を起こす可能性がある。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
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