米朝開戦の可能性は高くない

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米朝開戦の可能性は高くない

[2017年8月29日]

近頃、米朝情勢の緊張で、両国の代表が互いに相手を揺さぶる発言をし、地政学リスクの高まりが世界的な金融市場の変動を触発している。米朝関係が緊張しているものの、開戦が及ぼす影響の代償は大きすぎるため、筆者は両国開戦の可能性は高くないと見ている。最近ではトランプ氏と金正恩氏が世界の2大狂人だと見なされているが、筋道のないような動きが、彼らに知恵がないことを表しているわけではない。米朝関係は単純な二国間問題ではなく、その背景には中国とロシアの利益がからんでいる。すでに中国は、米朝のどちらが先に手を出そうとも、中国がその国を支持することはないと明確に発表している。そのほか、米国が北朝鮮を攻撃すればロシアの東北アジア地区での利益を損なうことにもなる。

中国、ロシアそして米国にとって、北朝鮮は1つの駒である。中露は北朝鮮問題をきっかけに米国と国際的な事務取引ができ、米国もまた北朝鮮問題を利用して中国を牽制できる。ひとたび米朝開戦となった場合、北朝鮮は再び敗戦し、中米露の三国が各自の利益を争奪するための切り札を失うことになる。自国の利益に基づいて考慮するならば、北朝鮮に対する米国の強硬な発言はあくまでジェスチャーだと言えるだろう。そして、北朝鮮自身も中米露との間での自国の役割と立場を十分に理解しているはずだ。

韓国の文在寅大統領は北朝鮮との対話を望んでいるが、北朝鮮は応答していない。中国すらも圧力を加える中、北朝鮮は依然としてミサイル試射による実力の誇示を続けており、金正恩政権がきわめて強硬な外交路線をとっている。これは、米国が北朝鮮を実際に攻撃することはないとする金正恩氏の見解が関係している可能性がある。事実上、強硬な外交路線をとることは金正恩にとって弊害よりも利益が多い。利益とは、まず一つに米国に対し強硬な姿勢をとることで金正恩氏が指導者としての地位を強化できること。そして次に、ミサイルの試射で北朝鮮が国際舞台でより多くの政治カードをもたらすことができる点だ。米朝開戦の可能性はないと予想するものの、情勢の緊張が高まれば、金融市場に変動が起きるのは避けられないだろう。

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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