香港株上昇も、後の再下落に備えが必要

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香港株上昇も、後の再下落に備えが必要

[2019年3月4日]

2019年に入ってから香港株式市場は目覚ましいパフォーマンスを見せており、ハンセン指数は1月底値から4千ポイント以上急上昇し、ブル・ベアの境界線上まで回復したため、すでにブル相場に再挑戦していると見る人も多い。香港株式市場の反発が支持される要因は3つあり、第1に米中貿易交渉の合意予想が出たこと、第2に中国本土で多くの経済刺激策が発表されたこと、そして第3に米FRB(連邦準備理事会)が利上げの一時停止を発表したことだ。香港株式市場における投資ムードは非常に熱くなっているものの、下記のいくつかの潜在的懸念は軽視できない。

米中貿易交渉の一件で、米国側は中国側がより多くの米国製品を買えば解決は難しくないとしているが、中国側が米国側の要求に応えるには中国の経済構造を改変して全面的な合意に達しなければならないため、双方が最終的なコンセンサスを得ることは恐らく難しいだろう。徹底的に華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を排除しようとする動きからして、米国はもとより簡単に中国を見逃すつもりはないようだ。つまり、たとえ3月1日に米中協議が合意に達しようが、あるいは米国側が交渉期限を延長しようが、中国が引き続き利益を損なうと米国が見傚しさえすれば、トランプ氏がふたたび中国に対し制裁措置を実施する可能性は高い。

経済下落圧力を緩和するべく、中国本土は近月相次いで手数料削減、減税、預金準備率引き下げなどの経済刺激策を発表しており、これら一連の措置で経済が安定できるかどうかはまだ観察を続ける必要がある。一般的に、刺激措置の効果は早くとも数シーズン経たなければ見えてこない。経済指標で経済の底打ちが示されるまで、株式市場が再上昇する余地は有限となる恐れがある。そのほか、この先3年で期限を迎える大量の債権があり、返済及び融資の圧力上昇により資金需要が逼迫する可能性があるため、株式市場のパフォーマンスが抑圧されるだろう。

米FRBの相次ぐハト派発言が株式市場の投資ムードを後押ししているものの、ハト派姿勢の背景には経済リスクが潜んでいることが反映されている。減税効果が減退しつつあり、加えてトランプ政権は民主党からの抑制と均衡の兼ね合いから、今年米国経済が減速となる可能性は非常に高い。中国のほか、欧州経済も明らかに減速の兆しが出ており、イギリスのEU離脱問題懸念が未解決であることも欧州経済にとって不確定要因となっている。中米欧の三大経済体系でパフォーマンスが弱化する中、現段階で株式市場がブルかベアかを判断するには時期尚早と言えよう。

 

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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