米ドルペッグ制により、香港ドルが対人民元で1を超える上昇?

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米ドルペッグ制により、香港ドルが対人民元で1を超える上昇?

[2022年11月8日]

米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派的な姿勢を崩さず、米債券利回りが先月最高値を更新する中、日米金利差が拡大し続け、米ドルは先々週木曜日に日本円に対して150の大台を割り込み、1990年以来の安値を記録した。米ドルにペッグされた為替レートにより香港ドルは上昇を続け、ついに人民元に対して14年ぶりの水準に戻った。 これを喜ばしく思う人もいれば、悲しい人もいるだろう。

FRBの金融引き締め政策がインフレ抑制に失敗し、その代わりに消費者の信頼感が高まったのだろうか?日銀はインフレ時に金融緩和を主張している。通貨高が続いているが、コントロールの成果は望み通りにはなっていない。その一方では、通貨安が続き、次の「世界の工場 メイドインジャパン」の機会をもたらす。通貨の価値は、単に高くなれば良い、安くなれば悪いという理屈の問題ではない。

米国は公式には、消費意欲を減退させ、需要面から物価をコントロールするために、金利の引き上げを主張している。しかし、世界の中央銀行が金融引き締めに動く中であるが、米ドルが支配的なことで、手元のお金の価値が高まり、消費マインドが前年比で上昇した。この消費マインドの上昇で、輸入に大きく依存するCPIの高止まりが解消されないという、始まりとは正反対の状況が生まれた。その一方、早期退職、長く続く新型コロナなどの健康問題、労働意欲の低下などにより、米国の労働供給は著しく枯渇し、賃金も急速に上昇している。これらの多くの要因により、コントロールの成果は当初の目標から大きく乖離した。

日本の場合、アジア最大の経済大国であり、先進的な民主主義国家として、その政治政策の方向性は歴史的にほぼ欧米と同じであった。しかし、新型コロナ流行後の地理的な隔離により、GDP回復において米国に大きく差をつけられている。政策転換を推進するには、その基盤がまだ十分でなく、経済面ではあらゆる方面からの資本の引き止めに耐えなければならない。世界的な混乱の中で、他者への追従では自国の問題を解決することにはならず、日米の通貨政策のデカップリングはその第一歩に過ぎない。米国が反グローバル化のプロセスを主導し、一方的な制裁を加えている今、円は米国のパワーから距離をとる絶好の機会なのかもしれない。

香港も同じように厄介な状況にある。アジアと世界の架け橋である香港は、中国を後背地に世界と向き合うことで、最も恩恵を受けるはずだった。これは、通貨価値についても同様だ。1997年の香港返還から2008年の金融危機まで、香港ドルの価値は常に人民元より高く、ピーク時には100HKD=107CNYとなった。したがって、香港が本来の地位を取り戻すためには、香港独自の補完的な政策は別として、香港ドルは人民元との等価を下回ってはならないと私は考える。

為替レートペッグ制の影響を受け、米国連邦準備制度理事会の利上げサイクルにともない、香港ドルは人民元に対して16%近くも受動的に上昇した。おそらく、現在の金利の引き上げサイクルが延長されることで、香港は通貨のアップグレードをより迅速に行うことができる。これは「世界の金融センター」のあるべき姿である。アジアの金融センターとしてシンガポールと競い合う重要な時期に、ポストコロナ時代のチャンスをつかめるかどうかが重要となろう。

もちろん、香港ドル相場の安定を保つために、香港金融管理局は短期的には受動的に米ドルを売り、香港ドルを買う必要がある。香港の銀行システムの外貨準備高が月20%のペースで減少した後、市場では「為替ペッグ制度は廃止すべき」という声が高まった。 しかし、1HKD=1CNYにするためには、さらに8%弱の上昇幅しかない。統計によると、香港の外貨準備高は9月時点でも世界のトップ10に入っているが、これでも十分ではなかろうか。外需型経済である香港は、商品の60%以上を輸入に頼っており、香港ドルは現在でも対外的に通貨価値が上昇している数少ない通貨であり、香港の資産の魅力を高めることができるため、現時点における為替ペッグ制度の影響は、利点が欠点を上回っていると言えよう。

フェー・チャン

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