- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2026年10月29日]
今月、香港でテレビにもたびたび出演していた著名な金融アナリストが、路上で突然倒れ、心臓発作で亡くなった。市場関係者に深い悲しみが広がった。しかし、さらに痛ましいのは、死後もなお、過去の予測が外れたことを理由に、ネット上で揶揄する声が絶えないことだ。
そもそも、株式市場が変動するのは日常茶飯事である。アナリストは日々、テレビやインターネットを通じて相場を分析し、毎月、数百銘柄に言及することもある。すべての予測を的中させることなど、できるはずがない。
仮に、予測が神のお告げのように絶対に外れないのであれば、なぜ毎日のようにテレビに出演し、ほかの投資家に情報を伝える必要があるのだろうか。
予測が外れること自体は、ごく自然なことだ。長期的にみれば、投資収益率は市場平均に近づいていく。売買手数料などの取引コストを考慮すれば、市場平均を下回る結果になったとしても不思議ではない。
これは、私が勝手に唱えている理屈ではない。投資の世界で「オマハの賢人」と称されるウォーレン・バフェットでさえ、10年という長い期間で運用成績をみれば、そのリターンは市場平均に近づいていく。しかも、ここでは関連する手数料や税金を考慮していない。
バフェット氏とS&P500種の運用成績比較

アナリストがどれほど努力を重ね、職務に忠実に取り組んだとしても、一般の投資家からの評価は賛否が分かれる。その根本的な理由は、相場や個別銘柄の値動きを完璧に予測し、上昇も下落も余すところなく捉えられるアナリストやファンドマネジャーは存在しないからだ。
長期的にみれば、AI(人工知能)を活用した資産運用が普及するにつれ、投資家の役割は小さくなり、アナリストやファンドマネジャーも徐々に姿を消していくと私は考えている。
では、AIの登場によって、相場の上げ下げを完璧に捉えられるファンドが生まれるのだろうか。そう考える投資家もいるかもしれない。しかし、答えは明確に「ノー」だ。
理由は単純である。仮に、あらゆる相場変動を正確に捉えられる超高性能AIが存在すれば、巨額の資金がそのファンドに流れ込むだろう。運用資産が一定の規模に達すれば、今度はファンド自体が市場を動かす存在となる。その運用成績も市場全体の動向を反映するようになり、当然ながら相場変動の影響を免れなくなる。結果として、予測の精度も低下していくはずだ。
それでは、資産運用業界は今後、どのように変わっていくのか。
一般的には、多くの人にとって基本的な資産配分や運用の判断はAIが担うようになり、専門家による個別対応を必要とするのは、一部の富裕層に限られていくとみられる。そうした顧客向けのサービスも、人間の専門知識とAIを組み合わせた形へと変化していくだろう。
だからこそ、今後10年も人間の専門家から投資助言を受けられる機会があるなら、大切にしたい。10年後には、投資について気軽に相談できる相手を見つけることさえ、難しくなっているかもしれない。
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
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