- テンガードホールディングスリミテッド
スタッフコラム
[2017年1月10日]
新年が明け、現在ふたたび総括と先行きの見通しを立てるタイミングである。2016年を振りかえると、金融市場において最も明確な変化はトランプ氏の大統領選勝利後に出現している。トランプ氏の当選後、市場では米利上げペースの加速が期待され、米ドル為替指数が急上昇し、債券市場や新興国市場から資金が流出。資金は米ドルに流入し、米国株の最高値を牽引している。欧州、日本、中国などの主要経済体系と比較すると、米国は比較的利上げの条件を満たしており、金利差優勢となる中、今年は米ドル高が続く見込みだ。米ドルは世界の基軸通貨であるため、ドル高傾向は世界中のアセットアロケーションに影響を与えるに違いない。
利上げ予測のほか、欧州の政局に変動要因が満ちている事もドル高を後押ししている。一般的に、英国は今年EU離脱交渉を進めていくと見られているが、その他のEU構成国が英国に続いてEU離脱の国民投票を行うことを防止するべく、EUが離脱問題上で英国を優遇する可能性は低いと予想されている。その他、フランス、ドイツなどの欧州諸国も今年総選挙を控えており、再びブラック・スワン(誰しも予想しなかった危機的現象)がもたらされる懸念がぬぐえない。欧州債務問題の勃発後、「欧州不信」の情緒がEU構成国の間で広がっており、もし仏独両国の政局に重大な変化が現れた場合、EU解体懸念が過熱することになろう。リスク回避のため、今年は欧州の資金が米ドルへ投じられる可能性は非常に高い。
ドル高は利上げ予測に基づくため、今年の債券市場はさらなる調整圧力を受ける可能性がとても高い。最近の続落を経て、世界的に債券市場が弱気相場に踏み入った可能性が高く、資金が債券市場を離れ株式市場へ逆流する可能性がある。しかし、もし債券市場の急落が激し過ぎる場合、世界的な金融危機を触発する可能性が残される。米国債は主に各国の中央銀行と大手企業が保有しており、債券価格下落によって中央銀行の外貨預金に動きが出て、企業も債券投資における減損に迫られるだろう。債券市場はすでに弱気相場に直面していると見られ、債券保有者はこの先投げ売りに走り、債券市場で嵐が巻き起こるかどうかが今年の市場の焦点となろう。
テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)
証券取引委員 (SFC:Securities and Futures Commission) の Type 4, 9 のライセンスを取得しているファイナンシャルアドバイザーです。
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