中米力比べが続けば株式市場の福とならず

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中米力比べが続けば株式市場の福とならず

[2018年5月3日]

 

先だって、米国は米国企業から中国通信機器メーカーZTE社(中興通訊、00763)への製品販売を7年間禁止すると発表。この件が貿易摩擦を悪化させ、中米の関係は冷え込みが加速している。ZTE社は中国国内において重要な通信設備の供給企業であり、市場シェアは3割に達する。ZTE社のチップは主に米クアルコムの製品を採用しており、クアルコムが中興への製品提供を停止後、ZTE社は生産停止に追い込まれる可能性がある。ZTE社は米国の禁止令によりグループがショック状態に陥る可能性があるとしており、今回の禁止令がZTE社に及ぼす影響の重大性と破壊力が見て取れる。米国は禁止令発表にとどまらず、米国議会において、ZTE社・Huawei(華為)および Lenovo(連想、00992)が商業スパイ活動に関わっている可能性を指摘するレポートが出ているため、米国が中国の電気通信技術企業への対策を次々と打ち出してくる可能性が極めて高いだろう。米国の相次ぐ攻勢に直面し、中国がどう対応していくのかが市場の焦点となる。

ZTE社問題の後、市場では中国がチップ産業の発展を加速させると予想しており、自給自足が可能になることが長期的目標となろう。しかし「遠水不能救近火(遠くの水で近くの火を消すことはできない)」というように、中国のチップ製造の品質を米国水準まで引き上げることは、一朝一夕でできることではない。品質向上が達成されるまでの間に、中国の電気通信技術業界がどのように対処していくべきなのかは疑問が残る。理解しておけなければならないのは、中国が強力にチップ技術を高める間も、米国のチップ技術も同様に進化を続けるため、言い換えれば、中国のチップ技術が米国の水準に追いつくのは非常に困難な事であるということだ。世界の通信技術市場は間もなく5G世代となり、ZTE社問題が中国の5G発展にも間違いなくダメージを与えることになろう。もしZTE社問題がうまく解決できなければ、中国の電気通信技術業界の発展を妨げるだけでなく、世界的な5G市場がもたらすビジネスチャンスも米国の手中に握られる恐れがある。

筆者がこれまでのメディアの中ですでに示しているように、中米の経済・貿易が衝突を始めたとしても、それは単純な貿易戦争の始まりではない。米国の本当の狙いは中国の発展を妨げることであり、米中間の貿易赤字を改善したいというのはただの口実だ。中国・米国は世界の主要経済大国であるため、両国の争いが解決されなければ間違いなく世界にとって幸福なこととは言えない。中米貿易戦争が勃発してから、世界の金融市場で大幅変動が続いており、中米の力比べが無くなることなど無いのであれば、世界の金融市場が安楽の日々を迎えることは難しいだろう。

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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