預金準備率ダウンによる放出資金は実体経済に流入せずか

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預金準備率ダウンによる放出資金は実体経済に流入せずか

[2015年2月17日]

P1中国の中央銀行(中国人民銀行)は預金準備率を0.5パーセント引き下げることを発表し、市場では今回6,800億人民元以上の資金が放出されるとみている。ここ数週間にわたり、市場では中央銀行が春節にも預金準備率もしくは政策金利の引き下げを予想されていたため、今回の預金準備率の引き下げ決定についてサプライズ感はなかっただろう。先日の政府発表の製造業PMIは景況拡大と縮小の分かれめとなる50を割り、中国本土では中小企業だけが困難な局面に直面しているわけではなく、大企業の経営状況も同様に悪化していることが反映されている。こういった状況から、中央銀行がさらなる緩和措置をとったのは合理的と言えよう。また、年初は企業の貸借ピーク期に加え、将来的に新銘柄の上場が継続し、中央銀行もインフラプロジェクトが全面着手となる前に供給資金を確保する必要があるため、中央銀行による預金準備率の引き下げは実際のニーズによるものなのだ。

預金準備率の引き下げによって銀行資金は増加するものの、経済が好転できるかは依然未知数だ。08年の金融危機以降、世界的に資金が氾濫し、資金不足の起こらない状況下でも中国本土経済が依然下落傾向であることから、中国経済の目先の問題は決して「放水」(金融緩和)で解決できないことを物語っている。中国本土で、2種類の状況が預金準備率引き下げの影響を受けると考えられる。第一に銀行の融資意欲、第二に企業および個人の借り入れ需要だ。経済が弱化するにつれ、融資リスクを抑制するために、銀行は近年みな融資に慎重な態度を維持している。企業および個人も経済不振によって借り入れ意欲を欠いている。もしこれらの状況に改善がなければ、たとえ銀行の資金がまた増加しようとも、経済好転の兆しは見えてこないだろう。どうあれ、中央銀行による「放水」の効果は大きくとも経済圧力の緩和にしかならず、中国経済が困難な局面から抜け出すキーポイントは、依然として改革の成功にかかっている。

昨年11月に、中国人民銀行は突然の利下げ発表で中国・香港の株式市場の大幅上昇をもたらした。しかし今回の預金準備率引き下げが両エリアの株式市場にもたらす刺激は短期的となり、中でもA株は一段安の終値となり、投資家の失望感がうかがえる。事実上、中央銀行による幾度もの「放水」は中国経済が弱性であると明言しているようなもので、経済パフォーマンスが不振である以上、株式市場の「放水」にあやかった値上がりは、全く理性的とは言えない。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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