香港株が中国A株を下回る理由とは

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香港株が中国A株を下回る理由とは

[2015年6月17日]

A1上海総合は5日の終値が5000ポイントを突破。香港株では追随の動きが見られないばかりか、同日のハンセン指数は300ポイント近くもの下落幅を記録した。香港株とA株の動きが相反する理由として、その背景に2つの可能性が存在する。第一に、香港株式市場へエントリーしている投資家がA株の今後の相場に警戒心を持っていること。そして第二に、マーケットでは香港株式市場に影響を与える外部要因や現地要因が懸念されていることだ。

株式市場が大きく上昇するにつれ、A株はすでに割安とは言えなくなっており、中でもベンチャーボードではPER(株価収益率)が160倍にも達している。中国政府は今なおA株のブル相場継続を支持しており、中国によるテクニカル分析上でもA株にまだバブルリスクは存在していないとしているが、ベンチャーボードのPERからして、A株が現在の水準まで上昇していることを、リスクが高まっていないとするのは筋が通らないだろう。以前に政府は「A株の上昇は市場価値を創造したが、価値を創造したのではない」としており、このコメントは近月のA株急騰が実質的要因によるサポートを欠いていると中国政府が明確に認識していることを物語っている。最近、中国証券監督管理委員会(CSRC)は信用取引の管理手段や関連規制の改正案を発表しており、条件が整い次第、市場に意見を求めると見られる。こいった中国証券当局の挙動は、中国政府がA株の投機的取引に大きな関心を持っていることを反映している。政府の関心が高まるにつれ、A株では突如訪れた急落への懸念から新たな常態が生まれつつあるため、投資リスクを低下させるため、香港株式市場にエントリーの投資家はむしろ持ち株減少を選択している。そしてこれこそが、香港株式市場がA株急騰に追随していない理由となっているのだ。

香港株式市場は全面的に対外に開放された市場であるため、中国本土からの要因に加え、投資家達はその他の要因も見過ごせない。外部要因としては、終わりの見えないギリシャ債務問題という、「時限爆弾」がこれまでずっと潜在的な懸念材料の一つとなっている。この他にも、米FRBが16・17日に行うFOMCの議会後声明において、政策金利の方向性について新たな手がかりが提供される可能性に市場の焦点が集まっている。5月の米非農業部門雇用者数は28万人増と、予想より大きく上回ったため、市場では米国会が9月に利上げに踏み切る可能性に関心を寄せている。香港現地では、改革案が来月17日に立法会で採決される見通しで、採決後に大規模な社会運動が発生する可能性にも注目しておく必要がある。内憂外患といった状況下から、香港株式市場がA株を下回る理由が理解できるだろう。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

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