自動車産業が経済の重任を担う

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自動車産業が経済の重任を担う

[2015年10月22日]

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少し前に、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)による米国の排気ガステストの不正が発覚したことを受け、世界の1,000万台超規模で影響が出ると予想され、VW株の暴落を触発した。米国の環境規制法によると、自動車一台あたりの罰金は最高3.75万ドルとされており、市場ではVWが約180億ドルの罰金処分となる可能性が予想されている。もし上述の罰金総額となった場合、VWが破産の一途を辿る事になるとする分析もある。FWはドイツで約250,000人を雇用し、周辺に多くの業務提携企業を抱えているが、もし破産となれば、数十万人規模の失業者が発生すると見られ、ドイツ経済に深刻なダメージを与えることになろう。

ドイツのほか、自動車産業は多くの国々で同様に経済の中枢を担っている。リーマンショック後、米国の自動車産業は低迷し、その際ゼネラルモーターズ(GM)が経営破たんに陥り、米国政府に企業再建支援を求めた。「大企業ほど倒産させられない」前提のもと、米国政府はGMの企業再建を支援し、GM株は2010年11月に再上場となった。米国がGMを救済した理由は、経済が更なるダメージを受けないためである。同様の理由で、ドイツもVWを容易く倒産させることはないだろう。また、ドイツはユーロ圏の主要国として、圏内の経済情勢安定の重任を担っており、もしドイツが自国の安定を保てなければ、ユーロ圏全体が不安定となる可能性が高まってしまう。それゆえ、ユーロ圏を安定させるためにも、ドイツはVWの安定を支援しなければならない。

 中国本土でも、自動車産業は同様に重点産業となっており、経済が圧力を受ける際、中国政府は自動車産業への支援を通じて経済刺激を行う事を好む。リーマンショックの際には中国本土経済にもたらすダメージに対抗するため、農村部への自動車普及政策を打ち出した事もある。また最近では、李克強首相が新エネルギー車と小排気量自動車の発展措置の支持を決定。新エネルギー車のオプション品や、小排気量自動車の購入で優遇税制を設けるなどの新たな刺激策は、自動車販売量だけでなく、自動車産業のモデルチェンジ加速を後押しできており、経済安定に貢献している。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。) 

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