香港株式市場の頭打ち前によくある五大シグナル (二)

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香港株式市場の頭打ち前によくある五大シグナル (二)

[2017年12月11日]

十年の時間を経て、香港ハンセン指数はついに3万ポイントの水準へと突き進んでいる。香港株式市場の強気相場が盛り上がる中、最近は筆者周辺の多くの親戚や友人が、香港株式市場のいつが最高値となるのか質問してくるようになった。正直に言って、最高値を推測するというのは最も困難ことである。なぜなら市場の雰囲気は多くの要因から影響を受けるため、いずれか一つでも要因が変化すればマーケット全体の行方を左右してしまうからだ。それゆえに、最高値を予測するよりも、相場のトレンドに沿って読みすすめて行くしかない。総じて、株式市場が反転のシグナルを出す前に、皆が最高値や弱転を予想することは、すこぶるリスクの高い行為となる。

筆者の経験上、香港株式市場が頭打ちとなる前によくみられるシグナルが次にあげる五つだ。第一に、取引額が継続的に拡大。第二、弱気銘柄が追随し上昇する。第三、あらゆる人々全てが株式投資に参入する。第四、IPOへの反応が加熱する。そして第五は、好材料に対して相場の反応がなくなることである。

まず最近の香港株式市場の取引額を見ると、増加傾向となっているものの、「香港株大時代」の取引額が2千億ドルを上回ったことと比べると、最近の取引額は特別大きいわけではないため、高騰はまだ狂気的なレベルに陥っていない。市況は依然として理性的であり、香港株式市場はさらなる上昇の余地があると言えるだろう。

現在の香港株式市場の上昇曲線の特徴として、資金が一部の銘柄に集中していることがサポートとなっている。この現象により、多くの銘柄が今回の上昇の恩恵を受けることができておらず、中国移動(00941)が良い例だ。従来からの教訓では、その日の資金が弱気銘柄に流入していなければ、株式相場にまだ続伸の見込みがある。近年、中国移動は「藍灯篭(青ランタン:死者の家に掲げるものであることから、相場の下落シグナルの意味)」と見なされており、中国移動の「藍灯篭の効果」がいつ出現するのか様子見したい。

これまで、株式市場が急騰するたびに、普段株を買わない多くの人々までもが株式投資に参入し、いわゆる全民総株式投資という事態が起きていた。最近の上昇相場においても、普段投資をしないが株に突然興味を持ち始めている人々も確かに増えている。とはいえ、現在の相場がもう頭打ちの水準である可能性を懸念する人も少なくないため、現在は全民総株式投資という市況に達していないことがわかる。

全民総株式投資という事態に比べると、新規株式公開(IPO)への過剰反応の方がより注目に値する。少し前に、多くの新たな経済関連銘柄がIPOとなったが、いずれも買い注文が超過を記録しており、個別の銘柄では更に数千億ドルが凍結資金となっている。過去にはTom.com及び北京控股 (ベイジン・エンタープライズ/00392)でいずれも狂気的な高騰が起こり、両銘柄の上場後まもなく、香港株式市場が暴落相場に突入したことから、歴史が再演されてしまうのか否か要観察となる。

大きな強気相場の中では、たとえマイナス材料が出てきても、やはり相場は上昇する。反対に、市場が好材料に対してプラスの反応をしない場合があり、これは往往にして株式市場が反落する前兆となる。好材料が株価上昇を刺激できず、さらには株価下落にまで至るようであれば、その要因は銘柄の評価額と関連している。大きな上昇相場において、評価額はとても高い水準に達することがあるが、すでに全面的に好材料が反映されてしまっている場合、さらに多くの好材料が出てきても、株価に刺激をもたらすことができなくなる。

現在に至るまで、五大シグナルの中で、懸念されるのは第四のシグナルのみである。つまり、現段階の香港の株式市場は今なお安全であり、上昇の波はある程度継続する見込みがあるということだ。しかし、たとえ香港株式市場が頭打ち反落となったとしても、必ずしも香港株式市場が大暴落となる可能性を意味する訳ではない。なぜなら大暴落は必ずいくつかのファンダメンタルズが要因となって引き起こされるものであるからだ。

ここ20年、香港株式市場は何度か大規模な弱気相場を経験している。弱気相場を引き起こす元凶は、いずれも金融危機やバブル問題と切り離せない。例えば98年のアジア金融危機、2000年のITバブル崩壊、08年のリーマン・ショックや15年の中国A株暴落だ。今年の香港株式市場は巨大な上昇幅を累積しているが、世界全体で今のところ金融危機は見られないため、短期内に大規模な弱気相場が訪れる可能性は高くない。しかし、北朝鮮問題や、アメリカのバランスシート縮小による債券相場下落の可能性など、潜在的危機は存在している。もし潜在的危機が顕在する危機に発展した際には、香港株式市場だけにとどまらず、世界の株式市場でも大規模な弱気相場に歩み入ることになろう。

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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