住宅ローン緩和は、善意で行う悪事となるか

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住宅ローン緩和は、善意で行う悪事となるか

[2019年11月8日]

新たな施政方針演説において、住宅政策が重点となり、その中で最も注目されているのは、住宅購入者の住宅ローンが緩和されたことだ。新たな政策では、800万香港ドルの不動産であれば90%まで住宅ローンとすることができ、1,000万香港ドルの不動産では、最大80%まで住宅ローンとすることができるようになった。この政策が報じられるとすぐに、不動産を売りに出していた所有者は、すぐに引き上げるか価格の引き上げに動いた。中古建物の取引も大幅に活発になった。もともと頭金不足だった人々にとっては、住宅ローン緩和は不動産を所有する夢を実現するのに確実なサポートとなっている。しかし、住宅ローンの割合が増えるにつれて、直面するリスクも同時に増加する。

リーマンショックによる金融危機の後、世界中のホットマネーが押し寄せ、香港の不動産価格を高く押し上げた。しかし、一般市民の負担能力からすると、現在の不動産価格にはある程度のバブル問題が存在する。不動産価格が高い時に、住宅ローンが緩和される場合、ひとたび経済が大きなショックを受けるとマイナス資産に転じる時代が再び訪れることになろう。アジア金融危機の後、不動産価格は崩壊下落し、マイナス資産となる期間に陥り、香港経済は長いデフレサイクルを経験することになったことがある。

何ヶ月も続く社会的問題と米中貿易戦争の影響を受け、香港経済はここ数ヶ月悪化し続けている。中でも、小売、飲食、観光、貿易などの産業が最も影響を受けている。社会的問題はまだ解決の兆しが見られておらず、中国と米国がすぐにでも全面的な合意に達するという可能性はほとんどないため、香港経済は将来的に、さらに悪化する可能性がある。数字に関して見てみると、小売、飲食、観光業の雇用環境は悪化しており、建設業界も将来、給与の昇給停止をしなければならないとしており、香港経済は衰退の運命から逃れることが難しいようだ。

金融業は常に香港経済の重要な柱であり、金融業界にレイオフの波が現れた場合、香港経済は間違いなく衰退が加速する。不動産市場のパフォーマンスは雇用状況と密接に関係している。多くの人々の生計に問題が増えれば、不動産価格の下落圧力が高まることになる。住宅ローン割合を緩和した後、不動産価格が1割以上下落となるだけで、新施策で購入した不動産はマイナス資産となってしまう。マーケットに入る前には、まず経済環境と自身の負担能力を理解することが不可欠だ。住宅ローン割合が増加したからといって衝動的にマーケット参入することのないように。

 

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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