原油の値動きに影響する要因の複雑さ

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原油の値動きに影響する要因の複雑さ

[2014年12月10日]

P1ここ数カ月、原油価格が大幅に下落している。原油価格はすでに巨大な下落幅を累積しているものの、価格の変動には多くの複雑な要因が影響しているため、現段階ではいつ底打ちとなるか予想が難しい。多くの人は原油価格急落の要因を需要後退及び米ドル強勢によるものだと見ているが、筆者は上述の要因を、あくまで原油価格を下落させる要因の一部にとどまると見ている。今年に入ってから、米国をはじめとする西側諸国は続けざまにロシアへの制裁を実施し、ウクライナ干渉問題の懲罰をロシアに与えている。一連の制裁はロシア経済にダメージを与えており、十分な国家の財政収益を確保する為に、ロシアは石油輸出拡大に迫られている。ロシアは世界の主要な産油国となるべく、石油の輸出を拡大する事で原油価格へのプレッシャーを回避するはずだ。

 近年、世界の多くの国々がシェールガス開発に力を注ぎ、シェールガスの台頭によって産油国の利益が損なわれてきた。現在、一バレルあたりのシェールガスの生産コストは約70~75米ドルとなっており、もし石油価格が75ドルを上回る見通しとなれば、よりシェールガスの使用が選択される事になるだろう。シェールガスと競う以上、産油国にとって原油価格の下落は当然喜ばしい事であり、最近OPECが減産しないと表明したことからも伺える。サウジアラビアでは、一バレルの石油生産コストが約29ドルで、現在の原油価格を60ドルあまりで見積もっても、サウジアラビアはまだ石油の生産で利益を見込める。 

利益を見込めるとはいえ、サウジアラビアが原油価格を継続的に下落させたい意思の表れではない。過度な原油価格の下落は国の福利支出能力にダメージが加わる可能性が高まる為だ。中東では多くの産油国が国民に手厚い福利厚生を提供しており、福利支出の維持のため、該当の国々では十分な財源の確保が必要となる。ある分析によれば、原油価格が100ドルに達した場合、サウジアラビアは十分な財政資源を確保でき、福利支出を維持できるとしている。しかし現在の原油価格は100ドルを遥かに下回っており、サウジアラビアが福利支出を維持できなくなれば、政権までもが脅かされる可能性があるのだ。 

原油価格に影響を与える要因はかなり複雑であるため、石油関連商品の売買には十分に注意が必要だ。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム

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