資金循環緩和で株式相場はねじれ

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資金循環緩和で株式相場はねじれ

[2019年5月7日]

第1四半期の上昇トレンドを受け、香港株式市場の4月上旬は強勢となり、ハンセン指数は一気に30,300ポイント付近へ上昇した。米中貿易交渉が間も無く合意に達する見込みであるとのニュースや、中国本土の経済指標が回復していることが、香港株式市場における投資ムードの好材料となっている。30,000ポイントが心理的抵抗線であり、テクニカル分析上の重要抵抗線でもある。ハンセン指数は昨年1月に史上最高値となる33,484ポイントまで上昇した後下落へ転じ10月に24,540ポイントの底値をつけ下落幅は8,944ポイントに。下落幅の61.8%のフィボナッチ水準へ反発する場合、ハンセン指数の抵抗線はおよそ30,067ポイントとなる。もしこの水準を維持できなければ、その後利食い売りの動きとなる可能性が高まる。

 

香港株式市場のトレンドは力強いものの、やや不足がある。まず、香港株式市場は上昇動力が欠けている。近日、香港株式市場の1日あたりの取引額は最多で1,200億元ほどにとどまっており、まだ株式市場の上昇と足並みを揃えての増加は見られない。そのほか、テクニカル指標となるMACDも相反するシグナルとなっている。もちろん、相反するシグナルは株式市場の上昇トレンドがすぐさま収束することを意味している訳ではないものの、もしこのままねじれた状況が改善しない場合、株式市場の上昇トレンドがある時点で反転する恐れがある。

 

最近、筆者は多くの投資家から「世界経済のパフォーマンスが理想的でない中、なぜ年明けの月からこんなに強勢となっているのか?」といった質問を受けている。株式市場の反発がサポートされる理由はたくさんあり、米中貿易交渉に成果が出ることへの期待感や、中国本土経済の底打ち、米国の利上げ停止などが含まれる。中米双方がいずれも交渉は間も無く合意に達するだろうと発表しているものの、実情は今もなおいつ合意を締結できるのか不明であるため、両国が引き伸ばし策略をとっているかどうかに注意を払う価値があろう。中国本土においては、3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が予想を上回っているが、この経済回復は春節以降の企業の操業再開が関連している可能性がある。単に1ヶ月の指標だけで中国本土経済がすでに底打ちとなったかを見極めるのは容易ではないため、中国本土経済が回復を始めたかどうかを確定するにはさらに1、2ヶ月分の指標を見るのがベストだろう。

 

数多くの要因があるなか、実質的な変化が現れるのは米国の金利政策だ。昨年、FRB(米国連邦準備理事会)は継続して利上げとバランスシートの縮小を実施した。2019年に入ってからは、FRBの金融政策は非常にハト派のスタンスをとっており、利上げの一時停止のほか、バランスシート縮小を9月末で終了する予定だ。米国だけが金融政策のスタンスを変えたのではなく、ECB(欧州中央銀行)もまた現地経済の疲弊のため9月に新たな貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の実施および現在の金利水準を年末まで据え置くと発表している。中国本土に至っては、人民銀行(中央銀行)が年内に銀行の預金準備率を再び引き下げる可能性があるとしている。世界の主要中央銀行がすでに緊縮政策を取らなくなった状況下で、世界的に資金循環が緩和されていく見込みがある。株式市場のトレンドは結局のところ資金が主導するため、ホットマネーが増えた今、株式市場の短期トレンドが経済下落をフォローした動きになっていなくとも不自然ではないのだ。

テンガード ファンドマネージメントディレクター パトリック・シャム
(筆者本人は香港SFCライセンスホルダーであり、上述の株式を保有しておりません。)

パトリック・シャム

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