香港年金問題の複雑さ

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香港年金問題の複雑さ

[2014年9月5日]

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香港では皆年金制度について何年にも渡り討論がなされてきた。近日では「年金税」の徴収により、65歳以上の高齢者へ毎月3000香港ドルの「老年金」の支給が可能とする研究報告が発表されている。こういった提案は新税制の追加に関連することから、各界から激しい反発の声が上がっている。兼ねてより税負担の低さは香港の優位性の一つであるため、年金税制実施となれば商工業界の税負担が増加し、香港の競争力を損なう事となろう。

今回の「年金税制」の提案では給与所得からの源泉徴収制とし、大原則として「収入が多いほど納税額が多く」なり、月給の12万ドルを上限としている。明らかにこの「年金税制」は中産階級からの「貢ぎ物」頼みだ。香港において、中産階級が得られる福利厚生はすでに多くなく、加えて現在では毎月MPF(強制退職積立金制度)の積立が義務付けられているため、「年金税制」は中産階級の経済的負担を確実に増加させるだろう。税負担増の状況となれば、中産階級は否応無く日常生活の支出を減らすこととなり、経済全体が圧力を受ける可能性がある。

高齢化の主な要因は若年層における出産意欲の乏しさであるが、出産を望まない要因は数多く存在しており、経済的負担もその中に含まれる。事実上、香港での子供の養育は決して簡単では無く、教育や衣食住など全てに費用がかかるため、ひとたび「年金税制」が打ち出されれば、重い経済的負担は確実に若年層の出生率を押し下げるため、「年金税制」の実施は高齢化問題を更に悪化させる可能性が見て取れる。高齢化問題の解決には、ただ単に市民年金頼みでは不十分であり、政府はその他の手段と組み合わせて出生率を押し上げる必要がある。

上述のマイナス影響のほか、「年金税制」はその他の問題も引き起こす可能性が有る。例えば10年間「年金税」を納付した1名の被雇用者がいると仮定し、毎月の年金支給額が3000ドルなので、もし納付した「年金税」の全額を回収したい場合、少なくとも75歳まで生存していなければならない。もし75歳前に死亡すると、年金支給総額が納付額を下回る事になる。では回収できなかった残りの納付金はどう処理されるのか、こういった問題点について論争が勃発する可能性があるだろう。

テンガード ファンドマネージメント ディレクター パトリック・シャム

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