流動性低下の三部曲 - 急いで拾わなくても良い米国株

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流動性低下の三部曲 – 急いで拾わなくても良い米国株

[2022年7月7日]

上半期を終えて、各国による政策の違いは拡大しており、世界経済の全面的な回復はなお苦難に満ちている。連続して3回の利上げ後においても、米国のインフレ率は今月40年ぶりの高水準となった。積極的な利上げはインフレに対して期待された解決ができなかっただけでなく、米国と世界の景気後退への懸念さえ高めている。

テーパリング、利上げ、バランスシート縮小は、市場に流通する資金量を調整するツールと見ることができる。FRB(米連邦準備制度理事会)は昨年11月にテーパリングプログラムを開始し、今年3月に利上げを開始、そして、再び6月にテーパリングプログラムの実施を発表。国債買入の減少で、毎月市場に出てくる新しい資金が徐々に少なくなり、次に金利を上げることで資金が銀行システムに逆流、そして、最後に現在市場にある過剰な資金をすべて回収する。車の運転と同じで、まずはアクセルを緩め、次にブレーキをゆっくりかけて、スピードの出し過ぎを緩和するようなものだ。

計画によると、FRBは毎月950億ドルの引き締めを1年間継続する。香港証券取引所の5月の1日平均売買高は1,194億香港ドルに過ぎず、月間の売買高は約3000億米ドルということになる。 米国が毎月行うテーパリングの規模は、香港株の流動性を3分の1程度に低下させることに相当する。 もちろん、すべての資金減少が香港株式から発生するというわけではない。

FRBの公約である2%のインフレ率目標と現在の実質インフレ率8.6%を組み合わせると、次は現在の利上げサイクル延長かテーパリングの規模拡大が考えられ、米国経済のソフトランディングは極めて困難である。高いインフレ率を一刻も早く緩和するために、バランスシート縮小と金利引き上げの「二兎を追う」アプローチがとられるようになった。景気がまだ完全に回復していない今、投資家のリスク回避志向の高まりは、株式市場などのリスク資産の流動性をさらに弱めることになる。

実際、インフレ率低下と景気回復の間には必然的な相関関係はない。賃金上昇率が鈍化し、資産価値が大きく下落して、インフレのコストは、さらに下の消費者に転嫁されるだけであり、負債と資産のアンバランスは不況の前兆である。もし、市民の現金保有を引き締めることで需要を減らせば、新たな不安定要因を招くだけだ。問題解決の真の鍵は、生産性の向上とサプライチェーンの回復等にあるが、それは中央銀行の役割ではない。

中国と米国の両方の影響を最も受ける市場である香港株式は、両国の流動性を同時に反映する。現段階では、中国経済の底打ちによる上昇圧力が継続する一方、米国資本市場における流動性引き締めの方向性は不透明だ。この2つの力が働いている以上、香港株がコロナ禍前の高値に戻る時期を断言することは難しいかもしれない。しかし、中長期的に見れば、現在がまだ香港株の絶対的な底であることは間違いないだろう。

フェー・チャン

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